「クラトム・ジュース・ビュッフェ」営業者が逮捕 労働者たちを支えていた? “覚せい作用がある”禁止ハーブ

ネット上には「調理方法」が動画で上げられている(画像はSNSより)

危険ドラッグの規制が強化されたことで2016年から指定薬物に指定されたハーブにクラトム(ミトラガイナ・スペシオーサ)というのがあります。

東南アジア原産のこの植物は葉に覚せい作用のある成分が含まれ、タイでも法律によって大麻と同列で禁止されています。しかし服用するためのクラトム・ジュースへの加工が容易なこともあって使用者が減らないのが実情です。

そんなタイ中部のサムットサーコーン県にある漁業の町マハーチャイで8月6日、警察がアパートの捜索に向かいました。室内でクラトム・ジュースが密造・使用されているという情報を得たからです。

アパート奥のその部屋には鍵が外からかけられていたものの室内から話し声が聞こえたため、警察はボルトクリッパーで鍵を切断して部屋に踏み込み、中にいた22人を拘束しました。

21人がクラトム・ジュース使用者で内訳はタイ人6人、外国人15人(主にミャンマー人で漁業労働者だと思われます)。残る1人のミャンマー人、ナーイター容疑者がクラトム・ジュースを密造していました。

室内からはクラトム・ジュースの入った鍋とコップのセットが3セット発見されました。またナーイター容疑者が密造拠点として使っていたもう1室からはクラトムの生の葉が5~6キロ、大鍋3つ、クラトムの葉クズを濾す器具、クラトム・ジュースが詰められたボトル300本、クーラーボックスの他、クラトム・ジュース製造の際に混ぜる液体咳止め薬と炭酸ジュースが見つかりました。

ナーイター容疑者は、アパートの数部屋を借り上げて「クラトム・ジュース・ビュッフェ」を営業していたことが取り調べで判明しました。部屋入口にはそこが「クラトム・ジュース・ビュッフェ」であることを示すマークを掲げ、利用者が入室すると外から鍵をかけ誰もいないように装っていました。

各部屋では10~12人が利用でき、入室料1人50バーツ(約170円)を払えばクラトム・ジュース飲み放題で時間制限もなしという気前の良さから外国人肉体労働者の間で人気だったようです。

ナーイター容疑者はクラトムの葉を他の外国人労働者から1キロ40バーツ(約135円)で毎回20キロずつ購入してきて1年前から「クラトム・ジュース・ビュッフェ」を営み、持ち帰りでの販売もしていました。

クラトム・ジュースは飲むと力がみなぎり、暑さを感じなくなることから外国人肉体労働者の助けになっているという使命感を抱いていたようです。

クラトムの葉は生で食べると苦く不味いため、タイでは隠語で「4×100」と呼ばれるクラトム・ジュースにして飲むのが一般的です。コデインが配合されている咳止め薬とコーラなどの炭酸ジュースを混ぜることで酩酊効果が生じるのだとか。タイ南部では若者の常習が蔓延していて問題になっています。

日本で指定薬物となるのはクラトムのうち「直ちに人の身体に使用可能な形状のものに限る」と厚生労働省令で定められています。乾燥したクラトムの葉や根、茎は危険ドラッグとして使用可能な形状となるために禁止ですが、種の形状の場合は直ちに使用可能とは言えないために日本でも販売がされています。そうかとは言っても寒さに弱く、観賞用としても栽培は難しいようです。変な気はくれぐれも起こさないようにしてください。(取材・文◎赤熊賢)

© TABLO