飲料メーカーが進出計画を撤回 新東名・秦野IC周辺

大手飲料メーカーの進出が白紙になった土地区画整理事業の予定地=15日、秦野市戸川

 2020年度開通予定の新東名高速道路・秦野スマートインターチェンジ(IC、仮称)=秦野市=周辺で計画される土地区画整理事業で、大手飲料メーカーが進出計画を撤回していたことが分かった。地権者の一部に反対の声があることが背景とみられる。市は引き続き地権者の準備組織である準備組合を支援していく意向だが、地元の合意形成は道半ばにある。

 市によると、大手飲料メーカーの進出計画があったのは、土地区画整理事業の産業用地「産業利用促進ゾーン」。同市横野と戸川に開通予定のスマートICから約300メートル離れた農地中心の約15ヘクタールで、物流や製造などの優良企業の誘致を目的としている。

 地権者約100人でつくる同市戸川土地区画整理準備組合が、事業計画の策定に着手。大手飲料メーカーの工場の誘致に向けて協議を続けてきたが、今年7月に協議を中止したい旨の連絡が文書であったという。

 関係者によると、企業側は撤回の理由として「権利者との合意形成」「施設の配置計画」などの課題が克服されていないことを挙げたという。準備組合が今年1月下旬に開催した説明会で、企業の進出を想定して産業用地区域内の住宅24軒を移転する案が出され、これに対して14軒が反対したことなどが背景にあるとみられる。

 進出計画が白紙になったことについて、高橋昌和市長は「合意形成を図ることができず、撤回に至ったことは大変残念」としながらも、「市としては準備組合の事業計画案作成を支援し、事業の成就に全力を挙げたい」と説明。準備組合は20年度末としていた組合移行の予定を延期しつつも、地権者との合意形成を図っていくという。

 一方、事業予定地の住民らからは、今回の進出計画の撤回を残念がる声とともに、住宅移転への異論も聞こえてくる。

 70代の女性は「本当に残念。雇用と税収増加は市民の生活にも影響がある。子どもや孫の世代のためにも企業を誘致したかった」と話す。移転に難色を示す70代の男性は「事業区域から住宅地を除外することが大事。できれば開発してもらいたくないという考えが強い」と明かした。

 市都市整備課によると、現時点で進出の意向を示す企業はないという。

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