心の景色に残したい

 予定時刻よりもプレーボールは少し遅かった。やっと始まったな、とテレビ観戦していると、のっけからの2ランを含む攻めに「おおっ」と身を乗り出す▲夕暮れの甲子園球場で、海星は二回表から続けて先頭打者を塁に出し、チャンスもつくる。攻めているが、攻めあぐねてもいた。2回戦で18安打を放った強打の八戸学院光星(青森)は三回に逆転し、着実に点を重ねていく▲おおっ、と再び身を乗り出したのは、海星が六回表、一、二塁間を抜く鮮やかなタイムリーで同点に追い付いたときだった。勝ち越しのホームを狙う相手の走者を、外野手がこれも鮮やかなバックホームで刺すと、身をまた乗り出した▲これに限らず、試合が進むにつれて、お互いに勝ち越しを許さず、しのいでは攻める。こちらは何度も歓声を上げ、「惜しい」と声を上げた▲サヨナラ負けを喫するときまで目が離せなかった。応援したこちら側は、負けてもどこか爽やかな心持ちでいるのだが、選手たちはどうだろう。「あと一歩でベスト8」というところまできていた▲〈肩を落(おと)し去りゆく選手を見守りぬわが精神の遠景として〉島田修二。粘りに粘った、笑顔のまばゆいプレーを記憶に刻みたい。もう一歩だ、勝つんだ、と気迫に満ち満ちて惜しくも負け、去りゆく姿も心に残したい。(徹)

© 株式会社長崎新聞社