「敵にコメ」の縁、73年ぶり再戦

山形東高と函館中部高の野球部

©株式会社山形新聞社

73年前の逸話にちなみ、コメとジャガイモを贈り合った山形東高と函館中部高の野球部=北海道函館市(山形東高野球部提供)

 敵に「コメ」を贈る-。高校野球界にこんな逸話が残っている。終戦翌年で食糧難だった1946(昭和21)年夏の全国大会。東北代表として出場し、試合に敗れた山形中学(現・山形東高)が対戦相手で北海道代表の函館中学(現・函館中部高)に持参したコメを手渡した。それから73年後の今夏、両校野球部は交流試合で再戦。先輩たちに思いをはせ、野球ができる喜びをかみしめながら全力プレーを繰り広げた。

 両校は46年8月15~21日に開催された全国中等学校優勝野球大会(現・全国高校野球選手権大会)に出場した。甲子園球場は米軍に接収されていたため西宮球場が戦いの舞台となり、大会期間中に選手たちが食べるコメは地元から持ち込まなければならない。そんな時期だった。

 2回戦で対戦し、北海道代表の函館中学が13対5で山形中学に勝利したが、持参したコメが底をついてしまった。山形中学は勝ち進んだ函館中学のために、帰路に就く前に残っていたコメを贈ることにした。函館中学は感謝し、代わりにジャガイモを手渡したという。

 両校を再びつないだのが山形大野球部監督の沼田尚さん(38)。函館中部高OBで山形東高野球部のトレーナーも務める。山東で語り継がれていた逸話を知り「再戦を実現させるのは、両校に縁のある自分の宿命かと思った」。昨年から両校と話を進めて交流試合を開く運びになった。

 試合日はくしくも今年の全国大会開幕日の6日。両校とも1、2年生の新チームが函館市千代台公園野球場で2試合を繰り広げた。試合前のセレモニーでは73年前にちなみ、山東が「つや姫」3キロ、函館中部がジャガイモ20キロを贈り合った。試合は山東が7-4、9-8で2連勝し、雪辱を果たした。

 昼食会や合同練習なども通して親睦を深めた両校。山東の佐藤陽一監督(58)は「野球ができるのは平和と先輩たちの努力が根底にあることを選手に呼び掛けた。これからも歴史を語り継いでいきたい」。2年の長谷川喬士主将(16)は「先輩の相手を思いやる気持ちが素晴らしいと感じていた。試合ができることに感謝し、全力プレーを心掛けた」と話した。

 次戦を希望する声も上がり、今後も交流を続けていくことを確認したという。ただ「来年は甲子園で試合がしたい」。その思いを強くして両校は練習に励んでいる。