ノーファー・ノーレザー!ステラ・マッカートニーが取り組むサスティナブルファッションとは

ポール・マッカートニーの次女で実力派デザイナーのステラ・マッカートニーは、2001年自身のブランドを立ち上げ、地球環境や人々にやさしい製品づくりにこだわり続けていることでも有名です。

自身のブランド「Stella McCartney」は、レザーやファーなどは使わず、それでいて高級感がある洗練されたデザインのアイテムは注目を浴びています。

ここでは、ファッションを通して彼女が伝えたいことや、「ステラ・マッカートニー」のサスティナブルな取り組みについてご紹介していきます。

ファッションを通して伝えたいステラ・マッカートニーのポリシーとは

■ファッションを通して伝えたいステラ・マッカートニーのポリシーとは

 

元ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニーの次女ステラ・マッカートニー。

彼女が立ち上げたブランド「Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)」のアイテムは、レザーやファー、シルク、ラムウールといった動物性素材を一切使用しないことを徹底しています。

このブランドを立ち上げた理由について、彼女は次のように語っています。

 

「私はベジタリアンとして、イギリスの田舎の有機農場で育ちました。

だから私にとってそれは、とても自然なことなのです。

でもレザーやファーを使わないという決断の理由は、単に自分が動物を食べないからとか、ファッションのために毎年数百万もの動物が殺されるべきではないからではありません。

それは、ファーやレザーと環境の間のつながりを考えているからなのです。

そこには強い結びつきがあります。

多くの人が、レザーは食肉産業の副産物だから使ってもいいと主張しています。

でも畜産は地球温暖化や土壌劣化、大気・水質汚染、生物多様性の損失といった重大な環境問題の大きな原因のひとつなのです。

また数々の皮なめし工場が、米国環境保護庁が緊急に環境浄化を要する工場用地を指定した「スーパーファンド」リストの中で主要な環境汚染源とされています。」

 

・世界が認めるブランド「ステラ・マッカートニー」の誕生秘話

 

ステラ・マッカートニーは、20世紀を代表するイギリスのロックバンド「ビートルズ」のメンバーとして活躍したポール・マッカートニーの次女としてロンドンに生まれました。

12歳でデザインを始め、15歳でクリスチャン・ラクロワの最初のクチュールコレクションに参加し、その後フランスのクチュールブランド「クロエ」のクリエイティブディレクターに抜擢されるなど、有名人の娘というだけでなく、才能ある実力派デザイナーとしても知られています。

2001年に「クロエ」を退社した後、「グッチ」とのパートナーシップのもとで「ステラ・マッカートニー」をスタートさせました。

レディース、メンズ、キッズコレクションのほかにもアクセサリー、ランジェリー、アイウェア、フレグランスなど多岐に渡るアイテムを発表しています。

ブランド創設以来レザーやファーを一切使用しないなど、地球環境に配慮した商品を作り続け、サスティナブルであることを重視し、「責任を持ち、誠実で、現代的な会社であること」をブランドの信念としています。

ノーレザー・ノーファー!ステラ・マッカートニーがこだわる素材

■ノーレザー・ノーファー!ステラ・マッカートニーがこだわる素材

【オーガニックコットン】

 

現在ブランド・ステラ・マッカートニーで使用されているのは、コットンの61%が認証済みのオーガニックコットンです。

オーガニックコットンの栽培は土壌の健全性を向上させ、水質汚染がもたらす影響を軽減させることから、生物多様性や健全な生態系を守ることに繋がります。

ステラ・マッカートニーでは使用するコットンが再生可能なものになるよう、生産レベルでトレーサビリティを実施しています。。

今後は各農家の作業工程を把握し、土壌性質の改善や気候変動を和らげるための取り組みを続けていくと発表されており、オーガニックコットンはキッズウェア、デニム、ジャージー、ニットウェア、シャツ、ドレス、シューズ、バッグなど幅広いアイテムに使用される予定となっています。

ファーフリーファー

【ファーフリーファー】

 

 ステラ・マッカートニーは2001年の創設以来、決してリアルファーは使わないという誓いを守り続けています。

動物にとって残酷であることもありますが、リアルファーには保存と染色のために多くの毒性化学物質が必要となるため、自然環境や労働者の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

ステラ・マッカートニーでは、本物のような外観と質感を持つ、「ファーフリーファー」という豪華なフェイクファーを生み出すことに成功しており、本物と見分けがつきにくいことから、毛皮の使用をかえって助長してしまうのではないかという評判にもなっています。

ステラ・マッカートニーはこの製品を発表し、「ファッションのために動物を殺傷する必要がない」ということを実証しました。

 

【ベジタリアンレザー】

 

ファー同様、ブランド創設以来レザーの使用も一切していないステラ・マッカートニーでは、ポリエステルやポリウレタンを原料とした合成素材ベジタリアンレザーを使うことでその美しさはもちろん、環境にも配慮した製品を作り出せることを実現しています。

皮革を使わないことは、環境への負荷を軽減することに繋がります。

皮革使用による環境負荷の要因は、畜産農業に関連した土地利用や温室効果ガスの排出、製革工場で必要とされるエネルギーや水の消費となっており、国連食糧農業機関(FAO)の試算によると、世界の温室効果ガス排出量のうち14.5%~18%が畜産農業に起因、その65%が牛からのものだという結果が出ています。

例えばブラジル産のカーフレザーの代わりに再生ポリエステルを使うことで、環境への影響を1/24に抑えることができます。

ステラ・マッカートニーでは、革新的な素材とより安全な化学物質を使った合成皮革を生み出すことを目指しています。

ファッション業界に驚異的な成果をもたらし、進歩的でサスティナブルな素材へのアプローチの道を切り開いていきたいと考えています。

 

【再生カシミア】

 

ステラ・マッカートニーでは製造から流通過程で環境に与える負荷を可視化する環境損益を導入しています。

例でいうと、カシミアは「ステラ・マッカートニー」で使用されている原材料の0.13%であるにもかかわらず、算出された総環境負荷の25%を占めていることが判明しました。

1枚のカシミアセーターを作るためには4頭のヤギから取った繊維が必要です。

農家では飼育するヤギを増やすことでその需要に対応しようとするものの、ヤギは草を食べる時にひづめが地表に突き刺さるため、草が再び生えにくくなってしまい、その環境を維持することが難しくなります。

これにより、かつては豊かな草原だった土地が砂漠化してしまうという深刻な環境問題を抱えているのです。

そこで、ステラ・マッカートニーではウールの約100倍ものダメージを環境に与えるヴァージンカシミヤの使用を取りやめ、イタリアの工場で製造後に発生するカシミア廃棄物から生まれる再生カシミアを代替品とすることを決定しました。

この素材を使うことによって、循環性のある修復・再生が可能なファッション産業を構築できることが実証されています。

 

以前のファッション業界では、リアルファーやレザーを使わない高級ファッションブランドの構築は不可能であると考えられてきました。

しかしステラ・マッカートニーはその常識を覆し、ファーやレザーを使わないというブランドのポリシーに適う素材を開発し、またデザイン性や質感においてもクオリティ重視のアイテムづくりにこだわっています。

自然環境、動物、人間のいずれにとっても優しくありながら、高級製品の製造が可能であることを証明してきたステラ・マッカートニーのポリシーと実績は、消費者である私たちにとっても環境について考える大きなきっかけになると言えます。

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