「宝庫」か「倉庫」か

 「青い海、青い空、おいしい食材など『魅力の宝庫』である長崎が『魅力の倉庫』にならないように磨きをかけていただきたい」。先ごろ日銀長崎支店長を離任した平家達史さんが、長崎最後の会見でこう述べたという▲平家さんは1年5カ月前の支店長就任時にも、豊富な観光資源などに触れて「魅力の宝庫。他の地域よりも発展が期待できる」と述べていた。「宝庫」との評価は県民の一人として誇らしくもある▲もっとも、そうした評価や、「磨きをかけて」といった指摘はずっと前から受けてきたはずだ。魅力を生かし切れていない行政や経済関係者への苦言と厳しく受け止めるべきなのだろう▲日銀長崎支店は昨年、県内の観光産業に関する特別リポートをまとめた。基幹産業の造船業が苦戦する中、もう一つの基幹産業が必要で、その筆頭候補が観光だと指摘。交通アクセスの改善やグルメ満足度の向上などを課題に挙げている▲県も、県内の市町も観光振興に力を入れているのは承知している。近年は本県関連で2件もの世界文化遺産の登録も実現した。それでも活用が中途半端なままの観光資源はまだまだ多い▲少なくとも外から来た人の目には「もったいない」と映っている。せっかくの宝が倉庫の奥で眠ったままになっていないか、自問したい。(久)

© 株式会社長崎新聞社