民博の川瀬准教授「ひと癖ある」文学賞受賞 独自の語り口評価

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「しなやかでエネルギッシュに生きるエチオピアの人たちに魅了された」と語る国立民族学博物館准教授の川瀬慈さん(大阪府吹田市)

 エチオピアの古都・ゴンダールのエネルギッシュで濃密な人間関係の中で、したたかに生きる人たちを描いたエッセー集「ストリートの精霊たち」がこのほど、ひと癖ある文学作品を選ぶ「鉄犬ヘテロトピア文学賞」を受賞した。著者の国立民族学博物館准教授、川瀬慈さん(42)は映像人類学が専門で「調査の撮影技法を踏まえ、活字による新たな語り口を模索したことが評価された」と喜ぶ。

 2001年9月、川瀬さんは米中枢同時テロの直後に初めてゴンダールへ。楽器を操る芸能者、身障者、物売りの少年少女、娼婦(しょうふ)らが、貧しさと土着化したキリスト教がベースの古都で生きる姿に魅了され、現在まで毎年何度も撮影を交えた調査を進めてきた。

 本書の基は京都新聞夕刊「現代のことば」の連載。「論文には理論とデータによる立証が不可欠だが、人の営みは再現不可能。濃密なエネルギーを詩や散文も意識した文体で表現したい」と独自のタッチを展開し、単行本化で大幅に加筆した。

 鉄犬賞は「小さな場所、はずれた地点を根拠とし、場違いな人々に温かいまなざしを持つ」などの条件を満たす作品発掘が狙い。比較文学者・管啓次郎さんらが選考し、川瀬さんの表現手法をフランスの人類学者ミシェル・レリスや石牟礼道子さんら研究対象の土地と一体化した事例と比較して高く評価した。

 川瀬さんは「学会の外からの評価がうれしい。議論を喚起するよう論文、小説、詩などとの分類不能な作品を書いていきたい」と次回作の構想を練っている。「ストリートの精霊たち」は世界思想社刊、2052円。