地区安協「存続の危機」 免許業務委託 長崎県警と県安協の交渉難航 地域の交通活動に影響

免許事務業務委託のイメージ

 長崎県内各地区の交通安全協会(地区安協)の一部が「存続の危機」に直面している。自動車運転免許の更新などの業務を主な財源としてきたが、来年度以降できなくなる可能性があるためだ。地域の交通安全活動への影響も懸念される。
 来年度の運転免許関係の事務業務を巡り、県警と長年業務を受託してきた県交通安全協会(県安協)との間で交渉が難航している。委託形態の変更や財政難などが理由。
 県安協によると、県警から運転免許業務の委託が始まったのは23年前。運転免許試験場(大村市)では県安協の職員が業務を担い、各警察署にある窓口では便宜上、地区安協の職員が担当している。地区安協は県安協の下部組織ではなく別組織。
 関係者によると、昨年春ごろ、「(各署の)交通課員が地区安協の職員に指示をしている」という趣旨の指摘が長崎労働局に寄せられた。契約は県警と県安協の間で結んでおり、地区安協の職員への指導は違反として指導されたという。
 また、本来は業務委託を受けるには県公安委員会の認定が必要。県安協は認定を受けているが、受けていない地区安協(一部は認定)が担う形が「好ましくない」として、県警は県安協と協議。来年度から県安協から地区安協への委託をやめる方針が決まった。
 地区安協は業務の委託金と自主財源で運営している。委託形態については、県安協が地区安協の職員を直接雇用できれば問題は解消される。しかし、少なくとも40人程度を雇用する必要があり、人件費の捻出はかなり難しい状況。本年度、県安協は約7600万円で契約を結んでいるが「この額では人件費は赤字」と関係者。毎年、不足分を証紙販売の手数料などで穴埋めしながら「ぎりぎりの状況で続けてきている」と漏らす。
 県警と県安協は、各地の窓口を地域ごとに集約するなど効率化を図り、人や経費を削減できないかと模索を続ける。だが、県安協は「結局は委託費がある程度上がらなければ、現実的に来年度の入札は厳しい」との見方。「赤字な上、職員のリストラも必要になると分かっているのに、県警は県安協が受けざるを得ない状況をつくっている」と批判する声もある。
 地区安協からは既に、地域の交通安全活動の衰退を懸念する声が上がっている。地区安協は四季ごとの交通安全運動期間の啓発や、新入学児童へのランドセルカバーの寄贈などでも中心的な役割を担っている。
 ある地区安協の関係者は「免許業務がなくなれば協会は存続できない。任意加入の会員数は減る一方で今後の会費収入も見込めず、自治体や企業などからの補助がない地域では、財政的に十分な交通安全活動に取り組むことは難しくなる」と頭を抱える。
 来年度について県安協が入札に応じなければ、県警が自前で窓口体制を整える必要も出てくる。県警は「入札するかしないかは県安協が判断する話。結果によって対応を考えていく」としている。

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