山本尚貴、まさかのエンジンストールでランキング後退「自分の力不足。ここから這い上がる」気になるマルコ博士との会話

 ポイントランキングトップでスーパーフォーミュラ第5戦ツインリンクもてぎに臨んだ山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だったが、予選でランキング2位のニック・キャシディ(12番手)の前を奪う8番グリッドを獲得しながら、決勝ではフォーメーションラップのスタートでまさかのエンジンストール。ピットレーンスタートになってしまい、10位フィニッシュでランキング首位を1ポイント差でキャシディに明け渡す展開となってしまった。この週末はレッドブルF1のモータースポーツアドバイザ−、ドライバー決定の権限を持つヘルムート・マルコ博士が来日するなど、いろいろ慌ただしい週末となったが、レース後の山本尚貴に聞いた。

 レースではまさかのエンジンストール。原因はどこにあったのか?

「今まで起きたことがなかったことなので、自分でも驚いていますし、まったくリスクを取るところでなく、いつもどおりタイヤを空転させて前に進もうとクラッチを離したら、いきなりエンジンが止まってしまいました。それがハード側でなにか問題があったのか、ドライバー側で何か気をつけないといけないことがあったのなら自分に落ち度があったと思うのですが、今の段階ではまだ原因が分かっていません」と山本。

 今週末は予選セッションでもチームメイトの福住仁嶺に遅れを取るシーンもあり、セットアップが決まっていないように見えた。それでも山本はクルマやセットアップに原因を求めるのではなく、自分を責めた。

「今週末は流れという言葉で片づけてはいけないんですけど、うまくいくポイントが何もなかった週末になってしまって、改めて自分の力不足も感じました。このまま終わってしまったらそれまでのドライバーですし、悔しくないわけがないので、ここから這い上がるきっかけにしないといけないなと思います」

 それでもレースでのペースは良く、ピットレーンスタートからポイント獲得まであと一歩の9位フィニッシュ。

「クリアで走れたときはレースペースも悪くなかったですし、ただ、野尻(智紀/TEAM MUGEN)選手に捕まって、ペースが落ちてしまったところもあります」

 気になるのは、戦略面だ。多くのドライバーがミディアムタイヤでの周回数をできる限り少なくするなか、山本はミディアムタイヤスタートで15周目までピットインを引っ張って、ソフトタイヤに交換している。

「結局、ソフトタイヤがどこまで保つのか分からない部分もありましたし、ミディアムタイヤもそこまでパフォーマンスが悪かったわけではなかった。ちょっと長めに引っ張ってしまったという部分はあるんですけど、結果論で言えばミディアムタイヤの周回をミニマムにして、ソフトタイヤでクリアなところでタイムを稼いだ方が良かった。だけど、トヨタ勢のような4周終了時点でのピットインは(燃費が保たないので)自分たちは入れなかったですね」

 ツインリンクもてぎは山本の地元のサーキットでありながら、実はトップフォーミュラでは未勝利のサーキット。山本にとっては決して得意とは言えないサーキットでもある。そのもてぎを終えてランキングトップはキャシディに奪われたが、わずか1ポイント差。残り2戦、岡山と鈴鹿は、山本とダンデライアンにとっては得意なサーキットになる。

「開幕戦の鈴鹿を見てもチームとしてダンデライアンは鈴鹿との相性がいい。次の岡山もチームが得意としているので、そこでポイントをしっかり稼いで、去年とは違う形で最終戦の鈴鹿に臨みたいのが理想ですね」

 そしてこのもてぎで忘れてはいけないのが、ヘルムート・マルコ博士が来日したことだ。予選日の走行前にはマルコ博士はダンデライアンのピットを訪れ、山本と笑顔で話す姿が見られた。いったい、どのような話をしていたのか?

「普通の挨拶と、あとは……言えない話ですね(苦笑)」と、山本。

 その予選日を終えて、マルコ博士は山本のF1昇格の可能性についてリップサービスもあるかもしれないが、「年齢は関係ない」「適応力が高い」と山本についてコメントを残している。

「いろいろ柔軟な対応をされているところもあると思いますが(苦笑)、年齢は関係ないと言ってくれているのであれば、それは僕としては嬉しいですけど、だからこそ、せっかく来て頂いたレースでいいところを見せたかった。でも、もちろん、彼が来ているから頑張るわけではなくて、いつも頑張っているので、たまたまこのようなレースを見せてしまったというのはアピールの場としては相応しくはなりませんでしたね」

「結果がすべてだからこそ、今回の結果も必要でしたし、過去の実績も結果だし、それをどのように判断されるのか。自分が(F1のシートの)選ばれる枠のなかにいれば光栄ですけど、今はいろいろ考えなければいけないことが多くて(苦笑)。目の前のチャンピオンシップに集中しないといけない部分と、みなさんの期待と夢の部分もあるので、その両方を100パーセントで応えるのが理想ですけど、なかなか大変ですね(苦笑)。それをうまく器用にできるようにしたいなと思います」

 先日、F1ドイツGPを訪問し、F1の内容もある程度カバーしつつ、スーパーGT、スーパーフォーミュラに参戦する山本としては今年はまさに多忙を極める日々。そのなかでも国内モータースポーツの今後のことも視野に入れてチャレンジし続ける山本がこれからのシーズン終盤、どのようなパフォーマンスを見せるのか。サーキット内外で注目を浴びる日々はまだまだ終わりそうにない。

予選日には来日したレッドブルF1のマルコ博士が山本のもとへ。笑顔で談笑するふたり
フォーメーションラップのスタートでエンジンストールしてしまい、ピットレーンスタートになる山本尚貴

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