英国風パブ「HUB」の株価がスポーツイベントのたびに上昇する理由

ラグビーワールドカップ日本大会の開催まで40日を切りました。大きなスポーツイベントを材料にして株価が上がる銘柄はいくつかありますが、英国風パブを経営する「HUB(ハブ)」もそんな銘柄の1つです。

店内に設置された大きなモニターでスポーツ中継を見ながらグラスを傾ける。おつまみも1品400~500円前後で、高くても800円程度。リーズナブルな値段で楽しめるスポーツバーというのが、平均的なHUBのイメージです。だからオリンピックやワールドカップなど、国際的なスポーツイベントを材料に株価が上がりやすい特性を持っています。

2006年4月の上場から13年余りになりますが、時価総額は多少のデコボコはありながら着実な成長を遂げてきました。苦戦を強いられる企業が多い外食業界にあって、異色の優良銘柄なのです。


なぜ堅実な成長を続けられるのか

実は同社、2006年4月の上場以来、一度も赤字にも無配にもなったことがありません。飛躍的な成長はしないけれど、地道かつ着実に成長しています。多くの外食企業が大量出店・大量閉店を繰り返す中、HUBは「店長を任せることができる人材の成長ペースに合わせた出店」(同社広報担当者)を行っているそうです。

このため、年間の出店数は多くてもせいぜい7~8。上場時に33だった店舗数が13年後の現在は109(7月末時点)ですから、年間の平均出店数は5。急成長とは無縁の会社です。

2017年に業績が大きく伸びているのは、サッカーワールドカップの予選があり、DAZNとのコラボでパブリックビューイングを開催するなどして、知名度が上がったことが影響しています。この年は2月にジャスダックから東証2部に、12月には同2部から同1部に昇格しています。

8月7日に公表した7月の月次実績は、既存店売上高が前年同月で97.6%。1年前をやや下回りましたが、今期は期初の3月から5月までは100%を超えていますし、6月は前年比82.9%と大きく落ちこんだように見えますが、去年の6月はサッカーのワールドカップが開催された月ですので、普段の状態に戻っただけと考えてよいでしょう。

堅実企業が新たな挑戦

現在、全国に約100ヵ所ある店舗の大半は首都圏に集中しています。関西圏は14ありますが、あとは名古屋に3、仙台に3あるだけです。そんなHUB。九州初出店となった店が、今年4月27日にオープンした、「福岡ソフトバンクホークス」の本拠地であるヤフオク!ドーム内の店舗です。

HUB店内から見た球場内の様子

場所はライトスタンド上部。窓際の座席からはグラウンドが見下ろせて、ホームまで一望できます。広さは115坪もあり、国内最大級です。

しかも意外なことに、スタジアム内への出店もこれが初。親和性が高そうなJリーグクラブの本拠地スタジアムには、まだ出店したことがないのです。Jリーグの本拠地スタジアムは大半が自治体所有ですから、そもそも構造上難しかったり、議会を通さなければならないなど、手続き上のハードルも高い可能性が考えられます。

その点、ヤフオク!ドームは球団が所有していますので、ドーム内のテナント誘致の自由度は高かったのかもしれません。

HUBとホークスの浅からぬ因縁

ヤフオク!ドームとHUBは、因縁浅からぬ関係でもあります。HUBはそもそもダイエーの100%子会社として1980年に誕生しているからです。ダイエーの経営悪化に伴い、ダイエーが手放した同社株は転売が繰り返されました。現在は「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングスが発行済み株式の3割を所有しています。

ヤフオク!ドームも全盛期のダイエーが、ホテルや商業施設との3点セットで博多湾に面した広大な埋立地に建設したもの。南海電鉄から買ったプロ野球団・南海ホークスの本拠地を大阪から福岡に移し、その本拠地球場として使うためでした。こちらも紆余曲折を経て、現在は球団自身の所有になっています。

ダイエーが建設した「3点セット」

HUBは今シーズン、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である仙台の「楽天生命パーク宮城」と、東京ヤクルトスワローズの本拠地である「明治神宮野球場」にも進出しています。こちらは店舗ではなく売店のみですが、今後も機会があれば他球場にも出店したい意向です。

他の外食企業が苦戦する中、着実な店舗運営に新しい取り組みが加わり、しかも結果が出ています。春先からの株価上昇は、こうした結果を出してみせたことへの評価でしょう。ラグビーワールドカップ、そして東京五輪の開催期間中は集客効果が高い、さまざまなサービスが投入されるはずですから、高値更新もあるかもしれません。

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