【高校野球】奥川温存の星稜、打線が大会最高OPS1.378…データで楽しむ夏の甲子園【第12日目・第3、4試合】

第101回全国高等学校野球選手権、第12日の結果一覧

星稜は22安打&4本塁打&7得点と打線が大奮起、荻原は強打の仙台育英を封じる快投

 前日の熱闘の興奮冷めやらぬ中で開催された夏の全国高等学校野球選手権大会第12日目。その第3試合、第4試合をセイバーメトリクスの指標で振り返ってみます。

 使用している指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

○星稜 17-1 仙台育英

○攻撃指標
【星稜】
打率.468  OPS1.378   wOBA.594   
O-swing% 28.2% Z-swing% 61.0% Swing% 42.9%
O-contact% 54.3% Z-contact% 88.5% Contact% 76.0%
Zone% 44.6% SwStr% 10.3%

【仙台育英】
打率.212 OPS.621 wOBA.306
O-swing% 30.0% Z-swing% 67.2% Swing% 49.2%
O-contact% 50.0% Z-contact% 83.7% Contact% 73.8%
Zone% 51.6% SwStr% 12.6%

○星稜・荻原吟哉投手の各指標
7イニング 打者数29 投球数102 
WHIP 1.00 P/IP 14.57 GB/FB 1.63
ストレート 割合17.6% Zone% 55.6% 空振り率 0%
スライダー 割合 48.0% Zone% 61.2% 空振り率 12.2%
フォーク 割合 32.4% Zone% 39.4% 空振り率 18.2%
全投球中の空振り率 11.8% 外角割合 52.9%

 準々決勝進出8チーム中、最も打率、OPSの数値が小さかった星稜でしたが、この準決勝、仙台育英戦では22安打、4本塁打、17得点と打線が大奮起しました。この試合でのOPS1.378は2回戦、敦賀気比の国学院久我山戦での1.326を上回って、今大会トップの数値となりました。

 前日165球の熱投で準々決勝進出に貢献した先輩の奥川投手を労うかのように、この試合では2年生選手が活躍しました。先発を務めた荻原投手は、奥川投手から教えてもらったというフォークを32%、スライダーを48%と変化球を主体にピッチングを組み立て、3試合通算OPS1.059の強打、仙台育英打線を7イニング、5安打、6奪三振の1失点に抑えました。

 また、この試合で2番打者に抜擢された今井秀輔選手はファーストストライクを積極的に狙う姿勢が功を奏し、二塁打、三塁打、本塁打と3本の長打でチームの勝利に貢献しました。特に第2打席は満塁の場面で打席に登場し、ファーストストライクとなる真ん中内寄りの139キロのストレートをフルスイング。レフトスタンドに飛び込む満塁ホームランとなりました。

履正社は4試合連続2桁安打、清水は初回以外は先頭打者の出塁許さず

○履正社 7-3 関東一

○攻撃指標
【履正社】
打率.303 OPS.748 wOBA.364
O-swing% 17.1% Z-swing% 63.6% Swing% 41.5%
O-contact% 41.7% Z-contact% 79.6% Contact% 72.1%
Zone% 52.4% SwStr% 11.6%

【関東一】
打率.194 OPS .533 wOBA .239 
O-swing% 29.0% Z-swing% 61.3% Swing% 45.2%
O-contact% 38.9% Z-contact% 94.7% Contact% 76.8%
Zone% 50.0% SwStr% 10.5%

○履正社・清水大成投手の各指標
9イニング 打者数33 投球数124 
WHIP 0.89 P/IP 13.78 GB/FB 1.30
ストレート 割合60.5% Zone% 57.3% 空振り率 5.3%
スライダー 割合 33.1% Zone% 41.5% 空振り率 22.0%
チェンジアップ 割合 4.8% Zone% 33.3% 空振り率 0%
全投球中の空振り率 10.5% 外角割合 55.3%

 夏の甲子園では28年前の1991年、大阪桐蔭vs帝京以来の準々決勝での大阪東京対決となった履正社vs関東一。3試合通算OPSが履正社1.106、関東一.940と強打を誇るチーム同士の対戦となりましたが、履正社が4試合連続の2桁安打、7得点で勝利し、夏の大会では初の準決勝進出となりました。

 履正社先発の清水投手は初回こそ先頭打者の出塁と3ランホームランを許してしましたが、2回以降はストレートを武器に先頭打者の出塁を許さず、124球の完投勝利を収めました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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