会社で無理に好かれなくても大丈夫!嫌がらせにキレて、居づらさがなくなった

©株式会社オプテージ

入社1年目、ようやく仕事に慣れてきた頃に、ひょんなことから同期のリーダー格の女の子に嫌われてしまった。

私が人から、特に女性から嫌われるのはこれが初めてのことではない。覚えているかぎりでは小学校から大学を卒業するまでの間、私をよく思わない女の子は常に周りに2〜3人いたように思う。女社会で嫌われるとどういうことになるかは、これまでの経験で痛いほど知っている。挨拶がわりに「調子に乗るな、ブス」と言われることもあったし、やってもないことを言いふらされて、悪者に仕立て上げられたこともある。「火のないところに煙は立たぬ」なんて、きっとそんな目に遭ったことがない人が考えた言葉なんだろう。

ともかく、私は社会人1年目で、これから長く付き合っていかなくてはならないだろう同期の女の子に嫌われてしまったのだ。同期は13人、ほとんどが女で、男は3人しかいない。しかも私を嫌ったのは、同期の中でも先輩や上司に取り入るのが一番うまくて、おまけに「みんなが自分の味方でいてくれないと嫌」を地で行くようなタイプだ。おまけに感情的だから、話が通じない。ああ、最悪だ。こうならないように気を付けていたのに、面倒臭いことになってしまった。彼女が初めて私を無視した日、仕事帰りの電車でこれからの人間関係を憂えて、深く深く、何度もため息をついたのを覚えている。

自分の中の「正義」と「協調性」

私は幼い頃から、思ったことをはっきりと言ってしまう性格だった。和を乱そうとしているわけではないのだけれど、誰かに理不尽なことをしたり、みんながよってたかって1人をいじめたりしているのを見過ごすことは自分の正義に反するし、黙っていられなかったのだ。当然、彼女たちは私の存在を良く思うわけもなく、次第にターゲットは私に変わっていった。ときには空き教室に呼び出されて激しい口論になることもあったし、男友達が多かったこともあって「男好き」と言われることもたくさんあった。そんな学生時代が「少しも辛くなかった」といえば嘘になるけれど、私は私なりに、自分の譲れないものを守ってきたつもりだったから、むしろ自分を誇らしくさえ思った。私は私の正義を、大学を卒業するまでの22年間、誰にも屈することなく貫き通したのだ。

一方で、会社に入社するにあたって、あらかじめ心に決めていたことがある。「これからは争いを生まず、協調性を大事にすること」だ。社会人たるもの、いい加減、場の空気を読めなければならない。嫌がらせに加勢する必要は決してないけれど、今までの私のように、腹が立ったらすぐさま主犯格と殴り合いをするような真似は控えて、穏便に、波風立たないように振舞わなければならない。会社で嫌われてしまってもクラス替えがあるわけでもないし、迷惑をかけたり、チームワークを乱して仕事に影響するようなことは絶対にあってはならない。何より、職場で嫌われたりすれば、辛い思いをするのは自分だ。いい加減大人にならないといけないのだ。

そうやって「これからは平和な人間関係を築くぞ」と胸に誓った日から数ヵ月後、私の決意はあまりにもあっさりと打ち砕かれてしまったのだけれど。

「会社の空気を乱してはならない」と思っていた

入社してしばらくの間は、とても平和だった。東京配属になった同期の女子が全員でランチに行き、お昼休みを目一杯使って仕事の愚痴や好きな先輩の話を言い合って、グループ内に価値観がまったく違う人がいても、なんとなくお互いに気を遣いあっていた。この頃の私たちにとって、昼休憩は女子会みたいなもので、”参加すること=グループへの忠誠を誓うこと”の証明だったのだ。でも、仕事が本格的に割り振られるようになってからは、「女子会」を最優先にするわけにもいかなくなった。忙しいときはどうしても昼休憩を削るしかなかったし、特にもっとも業務量の多いエリアの営業担当をしていた私は、毎日10分以内に昼食をかきこみ、急いで仕事に戻らなければならないくらいだった。

そんな私を、リーダー格の女の子はよく思わなかったらしい。突然無視されるようになり、私の目の前でわざと聞こえるように私の悪口を言い、「私に嫌がらせをされている」と片っ端から先輩たちに言いふらされた。彼女が仕事でミスをすればなぜか私のせいになっていたし、彼女がやらなくてはならない雑用はすべて私に押し付けられた。内心、はらわたが煮え繰り返るほど腹が立った。「この年齢になって、こんな幼稚な嫌がらせをする奴がいるのか」と驚き、呆れた。私の悪評は次第に他の部署のお局にまで届いたけれど、話し合いが通用する相手ではないのは明らかだし、ことを荒立てずに解決できる自信がなかったので、不本意ながら我慢することにしたのだ。当然ながら、ただでさえ忙しくてストレスフルな環境に加えて、日に日にエスカレートする嫌がらせを受け続けるのは相当な精神力を要した。毎朝会社に行くのが憂鬱で仕方がなかったが、こんな風になっても、私はまだ「会社の人間関係を悪化させてはならない」と自分に言い聞かせていた。

堪忍袋の緒が切れてしまった

嫌がらせを受け続けて1ヵ月か2ヵ月くらい経った頃、とうとうやってしまった。これまでせっかく努力してきたのに、派手にブチ切れてしまったのだ。課長も部長も係長もお局も同期も、みんながいるオフィスで烈火のごとく怒りをぶちまけてしまった。

朝と夜、毎日更衣室で大声で陰口を言われても、Facebookに悪口を書かれても、机に置いていたはずの私物がなくなっても、ずっと我慢してきたのに。彼女から押し付けられ続けた仕事のやり方にケチを付けられて、「自分さえよければいいと思ってるんでしょ?」なんて言われて、いとも簡単に「誓い」を破ってしまったのだ。彼女が仕事をサボって私に押し付けていたこと、上司から怒られたとき、毎回責任逃れをするために私を利用していたこと、私が彼女の仕事の件で話しかけても無視をし続けた結果、業務に支障をきたしていたこと。そしてその責任もすべて、私に転嫁したこと。

言いたいことをすべて言い終わったとき、彼女は泣いていた。オフィスは静まり返っていて、誰もこちらを向かなかった。地獄みたいな空気だったから、当然の反応だと思う。もう終わりだ。「誰からも嫌われず、平和な人間関係を築く」なんて夢のまた夢だったのだ。諦めよう。とりあえず、彼女にハンカチを差し出した。手を振り払われた。当然だ。でもな、私も辛かったんだ。

会社の人間関係がすべてではない

「吉川さん、大変だったね。私、あの子が吉川さんに嫌がらせしてるの知ってたんだ。でも何もできなくてごめんね。今回の件で会社内で色々と言われるかもしれないけど、もし嫌な目にあったら今度は力になれるようにするから、相談してね」

その日の仕事終わり、抜け殻みたいになっていたら、同じ部署の先輩が声をかけてくれた。その先輩も誰かと常に一緒にいるような人ではなかったし、いつも一人でいるからか、上司や先輩たちから「変わってる」とか「付き合いが悪い」と陰口を叩かれていたのを知っていた。でも先輩はいつも優しくて、私が部署の雑用を1人でやっていると、必ず手伝いにきてくれるような人だった。嫌がらせを受けてみんなから避けられていた私に、唯一優しくしてくれた人だったように思う。仕事に対しても、人一倍真剣に取り組んでいるのも知っていた。先輩のような人が、私のことを分かってくれていればそれでいいや。なんだか仲間を見つけたようで、自分の素の部分が認められたようで、先輩の一言がとても嬉しかったのだ。

次の日から、意外にも会社で「居づらい」と思うことはなくなった。仕事で言いたいことは言う。間違っていることは間違っていると言う。全員に好かれることを諦めて、この2つを解禁しただけで、ストレスはほとんどなくなった。押し付けられていた仕事をあるべきところに返したから、自分の仕事もスムーズに進むようになった。もちろん、リーダー格の女の子は相変わらず私のことを嫌いだった。みんなの前で恥をかかされたと思っているのか、無視の仕方が少し強目になった。でも、嫌がらせがエスカレートすることはなくなった。多分、私がキレたことに、ちょっとびっくりしたんだと思う。私は言いたいことを言えたし、これ以上引きずるつもりもなかったから、彼女にはあくまでフラットに接することにした。他の同期の女の子たちはずっと遠くから様子を伺っていたけれど、少し落ち着いた頃には、いつも通り接してくれるようになった。

会社の人間関係なんてどうでもいい、とまでは言わないけれど、会社の人たちとは、あくまで仕事上の付き合いだ。もちろん仲良くできればそれが一番いいけれど、無理をしてまで誰かに合わせなくてもいいんじゃないかと思う。仕事さえしっかりやっていれば誰にも文句を言われるいわれもないし、そもそも会社の人間関係がすべてではない。私のプライベートは会社の人たちに干渉されることもなく、好きな人と、好きなように人間関係を築けるのだ。会社の人に過度に期待しすぎず、「この人とはあくまで仕事の関係だ!」と割り切るのも、自分をストレスから守る大事なスキルだと私は思っている。