熱中症、実は危険な「住居」内 高齢者の搬送多数…「暑さ対策取らず」 アルコールは水分補給効果なし

立秋が過ぎても暑い日が続く。8月11日、横浜で日中の最高気温が35.6度を記録(横浜地方気象台調べ)

 梅雨明けから「災害級」の暑さが続き、熱中症で病院に運ばれる人が急増している。スポーツやレジャーで外出する際は日差しを避ける工夫が必要だが、自宅で過ごす時も対策が欠かせない。搬送されたケースを発生場所別でみると、「住居」で熱中症となった人が最も多いからだ。関東甲信地方は8月いっぱいは気温が高い見込みで、残暑も厳しくなる可能性がある。引き続き、注意と予防を怠らないようにしたい。

■「梅雨寒」一転

 全国の状況を取りまとめている総務省消防庁によると、熱中症の搬送者数は、九州や中国、近畿などが梅雨明けした7月22日~28日に急増した。全国では、前週の同15~21日の約3倍に当たる5664人に上り、神奈川でも224人が運ばれた。

 7月中旬まで「梅雨寒(つゆざむ)」が続いた今夏は、記録的な猛暑となった昨夏の3分の1程度で推移。しかし、その後一気に気温が上昇したため、「暑熱順化」ができていない人が多いとみられる。搬送者数は8月に大きく増えそうな気配だ。

 実際、関東甲信や東北が梅雨明けした7月29日~8月4日は全国で1万8347人と、1週間単位では2008年以降で過去2番目の多さを記録。神奈川も926人と前週の4.1倍となった。

 県消防課によると、県内の日別の状況は、183人となった1日の搬送者数が最も多く、今年初の猛暑日(海老名で35.1度)となった2日も180人が運ばれた。3日には、南足柄市の男性(85)が自宅のトイレで倒れているのが見つかり、熱中症で亡くなった。

 消防庁の集計では、今季は4日までに北海道や茨城、埼玉、大阪などで計82人が死亡している。

■半数が高齢者

 特に注目すべきなのは、発生場所別の搬送状況だ。最も多いのは住居(庭を含む)で、仕事場(工事現場や作業所など)や屋外(競技場や駐車場、駅など)、道路といった高温になりがちな所を抑え、全体の4割近くを占めている。

 一方、搬送者の年代別では約半数が高齢者となっており、「室内に居ながら、エアコンの利用や水分補給などの適切な暑さ対策を取っていない傾向」(県消防課)が浮かぶ。

 高齢者は、(1)暑さを感じにくい(2)体内の水分が若者に比べて少ない(3)汗をかきにくい-といった特徴があるため体質的に熱中症になりやく、若い人と比べて重症化しやすいとされる。

 子どもも注意が必要だ。汗を分泌する汗腺が発達しておらず、体温の調節機能が不十分な上、背が低いことで、強い日差しを受けて高温になる地表面の影響を受けやすい。気温は通常、150センチの高さで観測されるが、地表から50センチ程度の高さでは体感温度が2~3度ほど高くなることがあるという。

■こまめに水分

 命を失う危険性のある熱中症だが、予防策を講じれば防ぐことはできる。水分と塩分の補給、風通しのよい服装、室内での適切な温度管理などだ。

 水分補給は、のどの渇きを感じていない時でも欠かせず、一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度をこまめに取ることがポイント。汗を大量にかいた後は、スポーツドリンクなどで塩分を補給することが望ましい。一方、ビールなどアルコール飲料は利尿作用があるため、水分補給の効果は期待できないという。

 服装は熱の放出が多い首回りを緩めたり、吸汗・速乾性の高い素材を選んだりする。外出時は帽子や日傘の使用が推奨されている。

 室内でもエアコンや扇風機を組み合わせて使用するなど涼しく過ごせるよう工夫するとともに、すだれやカーテンで日差しを遮ることが重要だ。打ち水で気温を低下させることも効果的という。

 暑い日や体調のすぐれない日は無理をせず、休憩することも欠かせない。

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