ダイコンフィルムとトワイライト、オタクのテーマソングになった ELO の名曲 1983年 8月20日 第22回日本SF大会のオープニングムービーとして「DAICON Ⅳ」が上映された日

2013年、政府が「アニメは日本の文化だ」などと言い出して、当時のクールジャパン戦略担当大臣がコスプレ姿で海外イベントに登場した――。

「まったくゴスロリを理解していない」とバッシングを受け、自称ゴスロリ大臣の画像がネットに流れた時、ふとバニーガールのコスプレ美少女と ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の「トワイライト」(81年)が脳内でリフレインしたのは僕だけだろうか――(滝汗)。

稲田サンにしてみれば、ゴスロリなどというものに対して、さほど興味はなかったに違いない。十二単も不思議の国のアリスも同じものに見えたようで、そのコスプレがもしバニーであったとしても、どの道バッシングの対象になったんじゃないだろうか。一方、僕にしてみれば別に ELO が好きだった訳でも大臣のコスプレに萌えた訳でもない。彼らの音楽を知るきっかけとなったのは学生時代に観た、とある自主映画であった――。

大学のビデオアートサークルで一緒になったオタッキー(死語)のアパートに着くと面白いビデオがあるから観ようと言う。それが『DAICON Ⅳ』という短編アニメーション、後に『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87年)を演出した山賀博之サンや庵野秀明監督が中心となり制作されたものである。

“庵野秀明” と言えば、2016年の『シン・ゴジラ』の大ヒットに続き、2020年には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開予定。最近では『シン・ウルトラマン』が映画化されるというニュースが地上波のワイドショーで流されるほどの超売れっ子、いやすでに巨匠だ。

そして、90年代後半から『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズを大ヒットさせ、今尚、アニメ界に大きな力を与え続けているガイナックス。その初期メンバーと作り上げたイベント『DAICON Ⅳ』のオープニングアニメーションはもちろん素晴らしい出来だった。今作品は、その後十数年に亘って娯楽映画マニアやアニメをこじらせたオタクたち、SF者を大いに魅了し続けたのである。

内容は子供の頃から慣れ親しんできたウルトラマン、怪獣、宇宙人、ヤマト、ガンダム、戦隊ロボット、スター・ウォーズ、エイリアン、マーベルヒーロー等々、和洋の特撮+アニメキャラクターを次々と登場させたものだ。大学時代、友人宅で VHSビデオを再生したブラウン管には、オモチャ箱をひっくり返したような SF世界の中でバニーのコスプレ美少女が敵キャラ軍団と一大バトルを繰り広げる光景が映っていた――。

なにしろ現代のようにコンピュータが発達する前のこと。プロとの交流があったとしても、素人同然の学生がセル画を描きフィルムで撮影する「超アナログ手法」は大変地道な作業であったはず。それでも、オタクのトップランナーが練り上げた映像は見事にスペシウム(光)を放った。こうして僕たちの脳裏には、“ジャパニメーション” と呼ばれるアニメの未来を予見した映像が色濃く刷り込まれることになる。

そして、作品の中で生き生きと美少女が戦い続けるバックに爽快に流れていたのが ELO の「トワイライト」―― フジテレビ系ドラマ『電車男』(2005年)のオープニング曲と言えばわかる人も多いだろう。ジェフ・リンが作曲した同曲は、『DAICON Ⅳ』の BGM として、今やオタクたちのテーマソングと広く世界に認知されている。

Song Data
■Twilight / Electric Light Orchestra
■作詞・作曲:Jeff Lynne
■発売:1981年11月21日

※2015年12月29日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 鎌倉屋 武士

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