トコトン突き詰めて方法を編み出し、人に伝える。
仕事でも趣味でも、より一歩先を進む「技術人」。
【 今月の人 】
株式会社 ノセ精機 代表取締役社長
野瀬 昌治さん
大手企業で宇宙ロケットに搭載する実験装置の開発に携わっていた野瀬さんが実家の会社に戻ったのは1991年、好景気で経営は安泰でした。しかし2000年に取引先から「中国へ生産をシフトする」と突然納品を打ち切られ、1億5千万円の売上が0になったのです。野瀬さんは必死で営業に回りましたが相手にしてもらえず、新商品を作ろうと家具や火鉢を作ったり、オオクワガタを養殖してみたりと様々なことにチャレンジ。結局どれもモノにならず行き詰まっていた頃、大手企業から受注していた時のクレームのファイルを見直してみると、原因はすべて「はんだ付け」だったことに気付きます。そこで、はんだ付けに集中して従業員にも教えようとしましたが、教材がないという問題に直面。「それなら自分で作ろう」と知っている限りの情報を集めて「はんだ付け講座」というホームページを作りました。すると電話やメールが次々届くようになり、はんだ付けで困っている人がたくさんいることが分かったのです。そのニーズに応えるべくホームページで説明を繰り返すうち、「これは仕事になるのでは?」と解説DVDを作成して販売したところ、大ヒット商品に。これをきっかけに「はんだ付け」に特化した会社に生まれ変わりました。
このように自分で技術を身につけて人に伝えていく、という姿勢は趣味の中にも活かされています。学生時代にやっていた剣道は三段、スキーはSAJ※スキー検定1級の腕前。33歳から始めた空手も三段までいきました。魚釣りではメバル釣りに熱中。絶対に釣れるという方法を考え出してDVDを作って販売するほどで、この分野を流行らせたといいます。また、30年近く取り組んでいるピアノは、一度聞いて弾いてみたいと思った「戦場のメリークリスマス」の演奏に挑戦し続けています。そして、最近新しく始めたゴルフも「シングルになる」を目標に練習を重ねています。
器用ではないけれど負けず嫌いで、続けるのは得意だという野瀬さん。マスターしたことは全てホームページでオープンにしています。「仕事も趣味も、何でもトコトン突き詰めて編み出した技術を人に教える」それが野瀬流です。
周囲(世間)に対しても「良し」とする近江商人の「三方よし」理念に共通する野瀬さんの仕事の流儀。この野瀬流こそが、一歩先を進む「技術人」と言えるのではないでしょうか。
※SAJ:全日本スキー連盟
株式会社 ノセ精機
情報誌「自悠時間」掲載2015年9月