<特別対談:LIGARE×京都大学> Hospitality on Wheels を京都で 次世代の モビリティアントレプレナーを育てる

京都大学産官学連携本部IMS寄附研究部門の木谷哲夫教授(以下、木谷氏)に、モビリティサービス分野における新しいサービス創出の担い手となるアントレプレナーとベンチャー企業の育成について話を伺った。

LIGARE 編集長 井上(以下、井上)

:マルチモーダルなMaaSのサービスで運賃以外の収益を考える時、今は広告収入と決済システムの一本化による手数料やデータ共通基盤やプラットフォームの話が主流ですが、モビリティサービス業界のバリューチェーンを大きく変えるような新たなサービスはどのようにすれば出てくるでしょうか。

木谷氏

:もう少し根本的な社会変化に光が当たるように発想しないと、目先のニーズだけにとどまってしまう気がしますね。新たなビジネスを考える時、「新技術を導入すれば未来の生活者の価値観が変わる」という方向からアプローチする場合が多いですが、そうではなく、未来の状態から逆算して、今何ができるかを考えるレトロスペクティブ(retrospective)な発想をすべきです。

例えばUberは矮小化されて配車アプリの1つのように認識されていますが、本質的には誰でも好きな時に好きな場所で労働力を提供できるという働き方改革の究極形だと言えます。このUberのような働き方まで変革したビジネスモデル、ウーバーリズム(Uberism)とでも言いましょうか、これが実現すると私たちは車を所有しなくてもその便益を享受できるようになります。実際に今、自動車メーカーの仕事は車両の販売から車のサービス産業に移りつつあります。

このように未来の価値観を設定して逆算することで、よりインパクトの大きいサービスが生まれます。新規ビジネス創出には10年、15年後に何が生活者の新しい価値観や常識になっているのか、「未来の常識に合うサービスを今つくる」というレトロスペクティブの発想が必要です。

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