「マイナーチェンジをしてる」 元女房役が分析する阪神藤川の凄さとは?

阪神・藤川球児【写真:荒川祐史】

元女房役の野球解説者・野口寿浩氏が分析「マイナーチェンジをしてる」

 阪神の藤川球児投手が復活を遂げている。前半戦を31試合、防御率1.14、23ホールドの成績で7年ぶりに球宴に出場。7月26日にドリスが登録抹消されて守護神に復帰すると、7度のセーブ機会を全て成功させている。18日時点の防御率は1.67。奪三振率も13.64を誇る。

 7月21日で39歳を迎えた藤川がキャリアハイに迫る投球を見せているのはなぜなのか? 「ちょっとしたマイナーチェンジをしてる」と語るのは、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季までヤクルトで2年間バッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏。阪神時代の2003~08年には藤川の女房役も務めた。

「昔の火の玉ストレートって言われてたころと比べると、球自体はわかりやすく言えば落ちています。あそこまでの球は出ないのですが、その中で例えばコーナーワークだったりとか、フォークを低めに投げたりとか、そういうところでそれを補っています。前は自分の持ってる能力をフルに出して、真っすぐを目一杯投げていた。それで打ち取れていたけれども、今はちゃんと頭も使って、しっかりとしたピッチングを組み立てて抑えている。ちょっとしたマイナーチェンジをしていますよね」

 NPBで圧倒的な成績を残して2012年にメジャー挑戦し、翌年に肘を故障してトミー・ジョン手術を受けた藤川。2015年に帰国すると地元の四国IL・高知に入団。古巣阪神に復帰した2016年には43試合に登板し、防御率4.60とかつての輝きは影を潜めたかに思えた。しかし、2017年は52試合で防御率2.22、2018年は53試合で防御率2.32と復活を予感させる成績を残してきた。

「去年の状態と今年の状態を比べれば、やっぱり投げてる球の質が去年よりいい。トミー・ジョンは年が経てば経つほど良くなるわけじゃないですか。だから、もうだいぶ心配は消えたんじゃないかな、と。不安な部分は必ずあったでしょうから。特に春先の寒いときは、去年あたりだと。そういう不安はあったのでしょうが、今年はもう大丈夫だぞって感じじゃないですか」

「比較対象がいない」藤川のストレート、広島打線はある“秘策”で攻略?

 現役時代は数々の名投手のボールを受けてきた野口氏。それでも、ストレートの話題となると「真っすぐだけ見たらあれが一番」と即答する。

「あの真っすぐが一番。現時点での藤川球児は捕ったことないので。逆に言ったら全盛期は知っているわけですから。あの全盛期の真っすぐは、比較対象がいないのではないかというくらい凄かったですね」

“浮き上がる”と言われるストレートには「絶対ないのですが、そういう感覚に陥る」という。さらに野口氏は、阪神から横浜に移籍した2009年に同じく広島から移籍してきた森笠繁元外野手(現広島2軍打撃コーチ)から、藤川攻略の“秘策”を聞いていたと明かす。

「カープはどうやって打ってたのって聞いたら、『球が来るじゃないですか? そのボール一個分、上を振るんだ。そうすると当たるんですよ』って。でも本当にカープはそういうふうに対処してたんだなと。どっちも凄いですよね。一個上を振って、それくらいに(浮き上がってくるように)見えてるわけですよね」

“火の玉ストレート”を武器に2012年までに220セーブを積み上げた藤川。7年ぶりの守護神返り咲きで再びその数を増やし、14日時点で通算232セーブ。通算歴代4位のサファテまで残り2、名球会入りの条件を満たす250セーブまであと18に迫ってきた。(Full-Count編集部)

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