社説:象牙の取引規制 日本も市場閉鎖決断を

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 日本の象牙市場がアフリカゾウの密猟を誘発しているとして、スイスで開幕したワシントン条約締約国会議で、市場の閉鎖を求める決議案が焦点となっている。

 象牙やその加工品が大量に流通する日本への風当たりは強い。世界の潮流に背を向けて取引を続けるのは理解を得にくく、日本も象牙の取引禁止に踏み出すべきだ。

 今回の締約国会議の主な議題の一つが、象牙の国内取引を禁止するかどうかだ。後を絶たない象牙目当ての密猟を防ぐため、全ての国で象牙や象牙製品の売買禁止を求める決議案がアフリカ諸国から提出された。取引規制が緩い日本を名指しし、批判している。

 象牙の輸出入はワシントン条約で1990年以降、原則禁止された。ところが、日本などが国内に限って象牙の売買を続け、3年前の前回会議で密猟や違法取引につながる国内市場の閉鎖を各国に勧告する決議が採択された。

 その後、象牙の最大の消費国だった中国や、密輸の経由地と疑われたシンガポールなども市場閉鎖へかじを切った。ただ日本は「厳格に管理されており密猟とは無関係」と反論。全形を保った象牙の登録制度を今年7月から科学的な年代測定を求めるなど厳格化し、国内市場を維持する考えだ。

 だが、違法取引の排除を徹底できるか疑問が残る。厳格化前に大量の駆け込み登録があり、違法取引された象牙が含まれる可能性は否めない。実際に違法に入手した象牙を偽って登録した事件も摘発されている。象牙は和楽器や印鑑、装飾品などに欠かせないとの意見もあろうが、このままでは象牙取引の存続は難しい。

 象牙の密猟、密輸問題に取り組む環境調査エージェンシー(EIA)は「世界に残る大きな象牙市場は日本だけ。違法取引監視制度は抜け穴だらけで、中国に違法に持ち出されるものも多い」と手厳しい。EIAによると、象牙が日本から違法に輸出され、中国で押収された事案が今年上半期だけで少なくとも23件発覚し、既に昨年1年間の4件を大きく上回っている。

 開幕まで1年を切った東京五輪・パラリンピックで来日した観光客や選手らが、象牙を国外に違法に持ち出す恐れもある。それまでに売買禁止に取り組むよう日本に求める圧力は強い。世界からの厳しい視線を自覚すべきである。

 アフリカゾウは象牙目的の密猟で2006年より11万頭減ったとされる。日本が絶滅に加担することは絶対にあってはならない。