大津の園児事故で広がる対策 神奈川での取り組み

ベストを着用して園外を歩く保育園児や保育士=愛川町中津

 滋賀県大津市の交差点で今年5月、保育園児らの列に車が突っ込んで16人が死傷した事故を受け、神奈川県の相模原・県央エリアの自治体はそれぞれの視点で安全確保策に取り組んでいる。歩道にまで突っ込んでくる車を避ける対策は模索が続くが、可能な方策から早く始めようという意識の変化も生じている。

 「はい、皆、手を挙げて。横断歩道渡るよ」

 19日午前、愛川町中津地区の交差点に、鮮やかな黄色や黄緑の真新しいベストを着込んだ町立中津保育園の園児と保育士らの姿があった。連日の暑さで久々の外歩きとなったが、ベストはメッシュ素材で通気性と軽さもあり、園児は暑がることなく着用していた。

 このベストは、大津市の事故を受け町が6月議会で補正予算を組んで導入を決めた。園外活動時の園児らの存在をドライバーに認識されやすくする狙いで、今月から町立保育園全6カ所に在籍するすべての園児と保育士用に計約510枚を配布した。

 町総務課は「ベストだけで大津市のような事故の対策にはならない」とする一方、「できることから積極的に着手しようという考え方に立った」と説明。ほかにも車の車道外へのはみ出し防止に総延長約5.7キロの道路区画線の補修、通学路のカラー舗装などの予算も確保した。

 大津市の事故後、相模原市や厚木市など相模原・県央エリアの自治体の多くが足元の交差点に危険箇所がないか点検や調査を実施した。

 綾瀬市は、調べた244カ所のうち82カ所の交差点で「安全性の検討が必要なことが分かった」(市道路管理課)という。このうち車同士の接触など過去6年で7件の事故が相次いでいた早川城山地区の信号機のない交差点では、ガードレールと車止めの設置工事を7月に発注。市は「大津市の事故がきっかけで、できる場所から速やかに対応しようという意識が高まった」と説明する。

 道路以外にも目を向けたのは海老名市。今月上旬、市役所駐車場と隣接する芝生広場の境界にアーチ型の金属製ポールを設置した。広場は近隣の保育園や幼稚園の園児が散歩などに利用しているといい、駐車場からの誤進入を防ぐのが目的だ。

 市管財課は「大津の事故を機に、子どもたちが安心して過ごせるように新たに設置することにした」と話している。

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