平均寿命、健康寿命

 今ではほとんど聞かれない言葉に「長寿番付」というのがある。全国の高齢者名簿のことで、毎年「敬老の日」の頃になると、国が年齢の高い順に全国100人ほどの氏名などを公表していたが、2005年を最後に、順位を付けて公にするのをやめにした▲公表を望まない高齢者やその家族が増えたため、と当時の記事にある。最高齢の人を「第1位」とし、2位は誰それ、3位は…とランク付けするのも、時代に合わなくなったのだろう▲調べてみると、番付が取りやめになった後、「健康寿命」という言葉が紙面によく出るようになる。どれくらい長生きするかだけでなく、どれくらい長く、健やかでいられるか。ここ十何年で、関心の的は緩やかに変わってきたらしい▲先ごろ発表された「簡易生命表」によれば、昨年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、どちらも過去最高を更新した。世界で指折りの長寿国であるのに変わりはないが、寝たきりになったりせずに生活できる「健康寿命」とは開きがあるという▲16年の数字だが、健康寿命の平均は女性74.79歳、男性72.14歳で、その先、ご壮健とはいえない期間が10年かそこらある▲健康寿命を平均寿命にどう近づけるか。かつての長寿番付よりもずっと大きな関心事であり、難事でもある。(徹)

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