成宮アイコ「伝説にならないで」- 生きづらくて仕方なかった時、一番言われたかった言葉は「それ分かるわ」の一言だったのかもしれません

仕事を終え帰宅後、床に座り込みぼーっとして動けなくなりながら成宮アイコさんの朗読詩集『伝説にならないで ハロー言葉、あなたがひとりで打ち込んだ文字はわたしたちの目に見えている』を手に取り、開いたページに書いてあった文章と自分の今の状況が一致しすぎて笑ってしまいました。

この本に書かれている文章はキラキラした特別な言葉ではなく、140文字のツイートのような遠すぎない誰かの日常のようでもあり、誰にも言えなかったひみつの内緒話のようで、優しく時に力強い言葉たちばかりです。アイコさんの朗読にはいつかのわたしだったかもしれない誰かが存在している気がします。

例えば、どうしても愛せない故郷のこと、家族のこと、服装や見た目のこと、どうにもならない日常のこと、あの日言われた言葉のこと、メンタルのこと。

世界で自分ひとりしか感じないと思っていたコンプレックスだったものが誰かと共有できたら、少し楽になれる気がします。

わたしたちはそれぞれ個々で他人なので完全に同じではないけれど、全て違うわけではないので、あなたの正義を否定しないからわたしの正義があることも知っていてほしいんです。

生きづらくて仕方なかったあの時、一番言われたかった言葉は否定的な言葉でも的確なアドバイスでもなく、「それ分かるわ」の一言だったのかもしれません。それぞれのわたしたちができるだけ幸せに生きるために、否定ではなくできるだけ優しい言葉をかけれるようにしたいんです。弱っている日のわたしも多分そうされたい。

わたしは優しい人間ではないので、すべての人に優しくできないと思いますが、かつて嫌いだったあの人にも共感できる一面はきっと少しだけなら存在して、そしたらその人にも優しくしてほしいから少しだけ優しくしたい。

わたしたちが生き抜いてきた日々は消えません。言葉も、記憶もわたしたちが生きている限り消えませんが毎日毎日周りの環境は変わっていきます。それは、イトーヨーカドーの白いプラスチックのベンチだったり、誰もいない夜中の公園のブランコだったり。

だから、深夜のツイートのような、翌朝起きたら消去してしまうような気持ちはなかったことにしなくていいから、これまでのことにも明日からのことにも「その気持ち超分かるわ」って言われたいし、言わせてほしいんです。

世界は水面で、人生は地続き。

楽しかった時間が終わって辛い日常になったとしても、「またね」の約束がしたい。生きていくための遠くない小さな約束を沢山したい。そうやってわたしたちは出会おう。そしたらわたしは超生きれるし。

この本がバトンとなって多くの人に届き、繋がりますように。

水面のように広がっていきますように。(やなぎことね)

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