「水が出た!すごい」島民喜ぶ 水道施設のない五島市の赤島 福井工業大の雨水給水システム

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蛇口から出る雨水を確認する笠井教授(左)と学生=五島市赤島

 水道施設のない長崎県五島市の赤島で、集めた雨水を浄化し給水するシステムを整備している福井工業大(福井県福井市)環境情報学部の笠井利浩教授らが8月、出身者が帰省時に使う島内の簡易宿泊所まで配水管をつないだ。21日には島民が集まり、蛇口から供給された雨水に喜びの声を上げた。今後は島民に宿泊所の水を使ってもらう中で、気象条件と水質の関係や使用水量などを調べ、赤島をモデルとして他の場所に同システムを設置するために必要なデータを集める。

 雨水の活用などを研究する笠井教授は2017年に同システムの整備工事を開始。毎年夏に学生らと数週間、島に泊まり込みで作業し、1年目は波板を斜面地に設けた雨の集水設備、2年目は6トンの雨水を蓄えるタンクを設置した。3年目の今夏はタンクから簡易宿泊所まで約100メートルの配水管をつないだ。「雨畑(あめはた)」と名付けた集水施設から宿泊所までは、全長約250メートルの配水管で水が送られてくる。

 赤島で暮らす十数人の島民は自宅に設置したタンクに雨水をため、生活用水などを確保している。島民1人が1日に使う水は約60リットル。通常の3割ほどだ。

 笠井教授はこうした「超節水」を強いられる厳しい生活環境を、他にはない特異な地域資源と捉える。今後は給水システムのデータ収集と共に、島外の子どもたちが泊まり込みで水の大切さや自然の豊かさを体験する「雨水生活体験」プログラムの構築を目指す。昨春と今春には福井県の小中学生や高校生と共に赤島を訪れ、雨水を料理や入浴に使うプログラムを試行。参加者や島民に好評だった。

 笠井教授は本年度内に配水管を宿泊所内に引き入れて高性能の浄水器を設置し、いずれは宿泊施設としての営業許可を取る考え。体験プログラムの拠点にするという。五島市や市観光協会にもプログラムの本格化に向けて連携を求める。笠井教授は「宿泊施設として営業ができれば島に新たな経済活動が生まれ、人口減対策の糸口になる」と期待する。

 一連の研究には島民も協力的で、21日は島民数人が宿泊所の外の蛇口から勢いよく水が出る様子を見学。「出た!」「すごい」と喜んだ。雨水で顔を洗った赤島町自治会長の山口勝己さん(79)は「赤島で一番良い水。笠井教授と学生の熱意のおかげ。体験プログラムで子どもたちが島に来て、若い声が島中に響けばうれしい」と笑顔を浮かべた。

笠井教授らが整備した蛇口から出る雨水で顔を洗う島民