スーパーフォーミュラ:酷暑の第5戦もてぎ、予選を左右したタイヤのウォームアップ

 8月17~18日にツインリンクもてぎで行われた2019年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。決勝に先立つ予選でも、チームやドライバーによってタイヤの使い方が分かれた。いつものようにノックアウト方式で行なわれた予選だが、暑い季節ということもあり、Q2、Q3ではアウトラップからすぐアタックラップに入るドライバーが数名。これに対して多くはセオリーどおり、アウトラップの後、ウォームアップを1周してからアタックに入った。

 この両者が交錯する形となったのは、12台が走行したQ2。7分間のセッションが開始されて2分半というところから、アウトラップ~ウォームアップ~アタックの予定だった福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、野尻智紀(TEAM MUGEN)、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)、山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)らがコースイン。

 その集団に続く形で、アウトラップ~アタックの予定だったアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)、ハリソン・ニューウェイ(B-Max Racing with motopark)、平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がコースへと入った。

 そのためアウトラップ~アタック組のドライバーたちは、ウォームアップを行なっていたドライバーたちのトラフィックに引っかかってしまうことになる。結果的にポールポジションを獲得したパロウも「Q2ではセクター3以降の後半セクターでトラフィックの影響を受けた」と語った。

 またこのQ2で、セクター2までパロウのタイムを上回っていたニューウェイは、「ターン11で他のクルマが前にいて、大きくタイムを失ってしまった」と、Q2敗退を喫している。

 これに対して、ウォームアップをしてからアタックに入ったドライバーのなかで、独自の動きを見せたのが小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)だ。可夢偉はミディアムタイヤで争われたQ1後半でも、Q2、Q3でも、最も早くコースイン。特にソフトタイヤでのアタックとなるQ2、Q3では他のドライバーよりも1分ほど早くピットを後にした。

 この動きに関して、チームを率いる松田次生監督は「トラフィックのリスクを避け、自分の好きなようにタイヤを温められるようにと、あのタイミングで出しました」と言う。

 映像で見ると、Q3のアウトラップはスロー走行かと思われるぐらいゆっくりと走行していた可夢偉。であれば、アウトラップ~アタックでも良かったのではないかと思うが、松田監督は「それをやるには内圧から何から変えないとダメですし、リスクを避けたいというのもありました」と、作戦変更には踏み切れなかったという。

 一方、Q3ではアウトラップ~アタック組がコースインのタイミングを大きく遅らせたのも印象的な場面。パロウと平川はセッション残り3分を切ったところだったが、残り2分まで待ったのがルーカス・アウアー(B-Max Racing with motopark)。これはかなり攻めたタイミングだ。不測の事態も考慮し、通常はもう少しマージンを持ってピットアウトするパターンが多いからだ。

 これに関してアウアーは「赤旗や黄旗のことはまったく気にしなかったし、チェッカー前までに1周アウトラップができればいいから、あそこまで待ったんだ」とのこと。ただし、Q3では路面のグリップがより上がっていたため、「内圧やセットアップ、ドライビングも完璧には合わせきれなかった」と悔やむ。

 結果的にフロントロウに並んだのは、アウトラップ~アタック組のパロウと平川。アウアーも4番手に入った。「今回はその戦略が正解だったのかもしれない」とは、アタック前に1周のウォームアップを入れた予選3番手の福住だ。微妙なコンディション変化でも、タイムや順位が上下する。これからも、スーパーフォーミュラはシビアな戦いが繰り広げられる。

予選時は気温38℃、路面温度49℃。今季一番の暑さにタイヤの使い方が分かれた。アウトラップ~アタック組のアウアーは、Q3で残り2分まで待ってコースへ。結果的に4番手に留まったが、SFではそれほどまでの“攻め”が必要ということだろう。

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