[Drone Design]Vol.09 ソーラードローンの輝く未来がやってきた

NASAが開発する「Helios(ヘリオス)」 Credits: NASA Photo

ドローン本体の開発技術がいろいろ進む中で、実用化に向けた動きがいよいよ始まろうとしているのが、太陽光発電で長時間空を飛び続ける「ソーラードローン」です。大きな翼全体が太陽電池パネルになっているライトプレーン仕様の機体は、独特の雰囲気があります。

Wikipediaによると、太陽光発電で蓄えたエネルギーでプロペラを回して空を飛ぶというアイデアは1974年から始まり、1979年に世界初の有人機がポール・マクレディによって製作されています。一方、無人機はというとNASAが1998年に最初の試験飛行を行い、翌年に大型のソーラープレーン「Helios(ヘリオス)」の試験飛行を成功させています。

世界最長飛行記録を持つエアバスの「Zephyr(ゼファー)」

75mもある巨大な翼に搭載した14基のプロペラを太陽電池と燃料電池を使って動かすというアイデアで、3万mの高度で6ヶ月間飛び続けられるよう設計されていました。その後、エアバス社が開発した「Zephyr(ゼファー)」が約26日の世界最長飛行記録を2018年8月に打ち立てる(3)など、ソーラープレーンの開発は進み、用途も徐々に明確になってきました。

ソーラープレーンからソーラードローンへ

ソーラープレーンは飛行機と人工衛星の間ぐらいの高さを飛ぶことで、気象の影響を受けず、日中は太陽光エネルギーをたっぷり蓄えて夜間も空を飛び続けることができます。

ソーラーパネルの軽量化と効率化が進み、長時間の安定飛行が実現できるため衛星のような役割を果たせるようになり、現在は高高度疑似衛星(HAPS=High Altitude Pseudo-SatelliteHAPS)という位置付けで活用する動きが進んでいます。

HAPSモバイルが開発する「HAWK30(ホークサーティー)」 たとえばソフトバンクは、Heliosの製作を手掛けた米AeroVironmentと合弁でHAPSモバイルという会社を運営しており、成層圏から通信ネットワークを提供するソーラードローン「HAWK30(ホークサーティー)」を2019年4月に発表しています。

全長74mもの翼に10台のエンジンを搭載し、平均時速約110kmというスピードで数ヶ月の長期飛行を可能にするとしています。機体の開発はPan-Pacific UAS Test Range Complexという公立大学の研究機関が運営するプロジェクトで開発しており、NASAも参加しています。

年内にはハワイ州のラナイ島上空で5G通信のプラットフォームシステムを構築する試験飛行を行う予定で、FAA(米国連邦航空局)からも許可を得ています。

NASAはこれまでソーラープレーンの試験飛行を何度か失敗しているのですが、市場のニーズそのものは高まっているようです。HAPSに関しては、中国のXAI Aircraft社もこの8月に「MOZI 2」というソーラープレーンの初飛行を成功させ、災害救助、偵察、に加えて5G通信サービスに用途を拡大するとしています。

中国XAI Aircraft社の「MOZI 2」

2年間かけて開発された機体は、翼が15mあり、高度8000mの高さを最長で12時間飛び続けられソーラードローンという呼び方をしています。また、ASIA TIMESによると中国でソーラードローンの開発が激化していて、国営の中国航空宇宙科学産業(CASIC)が翼に1万個以上の太陽電池を搭載した機体を開発する「Feiyun(飛雲)」プロジェクトを順調に進めているようです。

中国航空宇宙科学産業(CASIC)の「Feiyun(飛雲)」プロジェクト

ここまで紹介したソーラードローンはどれもデザインはほぼ同じで、あまりドローンという印象はありませんが、ずばりソーラードローンの開発も進んでいます。

シンガポール国立大学が開発したソーラードローン シンガポール国立大学が開発したクアッドコプター型のドローンは、4m四方のパネルに148枚のソーラー発電セルを貼り付け、10mの高さを飛ばすことに成功しています。同様のタイプは2015年に台湾の大学が開発していますが、畳か絨毯がそのまま浮いているような形をしていて、これが蝶のようにデザインされればもっと注目されるのでは、などと思ってしまいます。

いずれにしてもソーラードローンの実用化はこれから。技術が進展して安定運用ができるようになれば、デザインも大きく変わる可能性もあるのではないか、と期待せずにはいられないのでした。

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