BTCC第7戦:新旧ホンダ・シビック・タイプR勢が3連勝の“ハットトリック”達成

 2019年シーズンのBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第7戦が8月17~18日にスラクストンで開催され、日曜に行われた3ヒートともにホンダ・シビック・タイプR勢が躍進。FK2型をドライブするCobra Sport AmD AutoAid/RCIB Insuranceのサム・トルドフ、FK8のBTC Racingジョシュ・クック、そしてファクトリー格のHalfords Yuasa Racing、チーム・ダイナミクスのダン・カミッシュがそれぞれ勝利を手にし、ホンダ勢が“ハットトリック”を決めている。

 まず土曜の予選で気を吐いたのはシリーズ復帰後2シーズン目、今季モーターベース・パフォーマンスからAmDに移籍し、ホンダ・シビックをドライブすることになったトルドフだった。

 元ウエスト・サリー・レーシング(WSR)所属のBMW使いだったトルドフは、サマーブレイク明けの前戦スネッタートンでもポールポジションを争う速さをみせながら、チーム・トヨタGB with SWM(スピードワークス・モータースポーツ)のトム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC)に最速の座を奪われ「正直、かなりショックだった」と、悔しさをにじませていた。

 そのトルドフは最初のプラクティスこそ20番手に留まるも、予選では順調にタイム更新を続け、1分15秒876をマーク。シリーズ2度のタイトル獲得経験者、ジェイソン・プラト(ボクスホール・アストラBTCC)を0.014秒差で2番手に押しやり、5月に続いてスラクストンでの連続ポールを獲得した。

 するとレース1では、フロントロウに並んだPower Maxed Racingのボクスホールがまさかの失策を犯す。プラトは正規のグリッド位置からスタートしなかったとしてドライブスルー・ペナルティを課されたことで姿を消し、トルドフは悠々クルージングの展開に。

 2番手以下カミッシュ、アダム・モーガン(メルセデス・ベンツAクラス)、クックの4台が後続を2秒以上引き離し、16周のチェッカーフラッグをくぐった。

 続くレース2ではこの上位勢がスリリングなオーバーテイクショーを披露し、サクセスバラストを搭載しながら粘り続ける首位トルドフに対し、モーガン、クックが同じ4周目に勝負に出る。

 イングランド国内でも最速の部類に数えられる“Church”コーナーでトルドフのインサイドに飛び込んだモーガンのメルセデスが、コーナー立ち上がりでトルドフのシビックに並ぶと、その2台のアウトサイドからはマットグレー&ピンク・アクセントのFK8シビック駆るクックが被せ、3台は超高速コーナーを接触することなく3ワイドでクリア。

5月に続いてポールポジションを獲得し、スラクストンでの”ダブル”達成のサム・トルドフ
R1フロントロウに並んでいたジェイソン・プラト(右)は、まさかのペナルティに沈む
勝者トルドフにとってもホンダ・シビックでの初勝利に。「待望の瞬間だった」
R2ではメルセデスのアダム・モーガンとホンダのジョシュ・クックが華麗なオーバーテイクを演出した

 このラップ首位でコントロールラインを通過したのはBTCのクックとなり、一旦前に出たFK8シビックは手を緩めることなくモーガンを突き放しにかかり、16周で1.973秒のギャップを築いてトップチェッカー。

 さらにファイナルラップ、最終コーナーのシケインでは“3タイムスBTCCチャンピオン”のマット・ニール(FK8ホンダ・シビック・タイプR)がWSRのトム・オリファント(BMW330i Mスポーツ)を仕留め、0.080秒差でコントロールラインに先着。劇的な逆転でBMWから最後の表彰台を勝ち獲り、オリファントの背後にチームメイトのカミッシュが続くトップ5となった。

 そしてトップ6のリバースグリッドとなるレース3では、ポールスタートのPower Maxed Racing、ロブ・コラード(ボクスホール・アストラBTCC)を先頭に、カミッシュ、オリファントの3台が序盤のレースをリードしていく。 

 するとハンプシャー州のクラシックサーキット上空を黒い雲が覆い始め、落ち始めた雨粒がたちまち路面を黒く染めていく。屈指の高速サーキットをスリックで攻め続けるツーリングカーの車列は、トラックのいたるところでゆらゆらと危うげなコントロールを強いられる状況のなか、ラップ10でついにレースが動く。

 高速コーナー“Church”でわずかに姿勢を乱した首位コラードのアストラは、左後輪を芝生に落としてわずかに失速。その隙を見逃さなかったカミッシュは、最終シケインのアウトサイドからボクスホールに並びかけ、一気にリードポジションを手に入れる。

 その後、コラードはなんとか2番手で踏ん張り続けたものの、より強く雨の影響を受けたのはBMWの方で、ここまでのシーズンを席巻してきた新型3シリーズは、FRのバランスが悪さをしたかオリファントがみるみるポジションを下げ、最終的に7位までドロップ。

 ここまで14レースで8度の表彰台を獲得しているカミッシュが、2019年チーム・ダイナミクス未勝利の流れを断ち切るシーズン初優勝。2位コラード、3位にニールのベテラン勢が続くポディウムとなった。

 一方、新型モデル投入以降シリーズを席巻してきたWSR勢は苦しい週末となり、選手権首位の王者コリン・ターキントンは9位、同じくランク2位のアンドリュー・ジョーダンは7位が最高位というまさかの結果に終わり、タイトル争いの全体像に変化がもたらされる週末となった。

 2019年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権、続く第8戦は約1カ月後の9月14~15日に、ノックヒルで開催される。

これでジョシュ・クックは2019年シーズン3勝目を記録。BMW勢に肉薄するランク4位に浮上した
WSRは、週末を通じてパフォーマンスを見せたトム・オリファント(中央)に対し、王者経験者ふたりが精彩を欠くことに
雨絡みとなったR3では、ここまで抜群の安定感を見せてきたダン・カミッシュがようやくの初勝利を記録
チーム・ダイナミクスはマット・ニール(左)も連続3位表彰台を獲得し、チームスタンディング首位に浮上

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