[シュウ・コバヤシのドローンマニア]Vol.2 3Dプリンターに関する色々

3Dプリンターに関する色々

前回、3Dプリンターを使ってこんなものを作ってましたよと、ご紹介しましたが、今回は具体的にどういったものが必要で、どういったものがあるのか簡単にご紹介します。

3Dデータ作成方法

3Dプリンターがあっても、プリントする元データの3Dデータがなければどうすることもできません。CADデータとも呼ばれるものです。3Dデータを手に入れるには2つの方法があります。

1.ネット上にあるデータを入手する

Thingiverseなどデータ共有サイトを利用する。まずはデータ共有サイトで検索して自分の必要としているデータが無いか探して見るところから始めてもいいと思います。

例えば「DJI mavic 2」という単語で検索するだけで、モーターカバーやランディングギアのエクステンションなど色々出てきます。これらのデータはほとんどが無料でダウンロードできますが、各データごとに著作権が設定されています。自分で使うだけならば大概は問題ないですが、ダウンロードをしたデータで3Dプリントした後に、その出力したものを販売することや、データの改変を許可してない場合もありますのでご注意ください。

2.自分でデータを作る

欲しいデータが無かった場合は、誰かに依頼するか、自分で作成するしかありません。3Dデータを作成するところが3Dプリンターを使う上で一番の難関かもしれません。私自身3DCGを手がけていたこともあり、3次元のモデリングに慣れているのですんなり習得できてしまいました。なので一から始めるには簡単にとりかかれるものから始めるのがいいと思います。

このソフトはWEBブラウザ上で動き、無料で使えます。四角や三角、球体など最初から用意されている形状の大きさや位置を変えながら形状を作成していきます。複雑な形状を作成するには少し手間がかかりますが、簡単なものであればあっという間に作れます。3Dプリンターとは関係ないですが、電子回路やプログラミングの設計もできるようです。

一通り3Dデータの作成に慣れたらもっと高機能なソフトウェアにステップアップしましょう。無料のものから有料のものまで数多くありますが、私がおすすめするのは、FUSION360です。

体験版もありますし、学生や、非営利、条件はありますがスタートアップ企業などは無料で使えます。

また、有償であっても機能から考えて他のソフトに比べてお手頃だと思います。ソフトウェアに関しての詳しい使い方はとても多岐にわたりますのでまた別の機会に。もしくはもっと詳しい別の方に。

3Dプリンターの選定

3Dプリンターといっても種類が色々あります。詳しく分類すると非常に多岐にわたるのでざっくり分類します。

1.積層方式

ネリネリと細い糸状に材料を押し出していき、積み重ねて造形していくタイプです。家庭用として普及しているのはほぼこのタイプです。価格も数万円から数十万円と幅広いですが、最近は安くても性能がいいものが出てきました。扱いもかんたんですし、材料となるフィラメントも簡単に手に入ります。まず手始めに手に入れるのにおすすめです。

2.光学造形方式

光に反応して固まるレジンを材料にして造形するタイプの3Dプリンターです。底面にフィルムが貼られているバットにレジンを入れ、底面からLCDディスプレイなどで形状を照射して固めていき、1段ずつ引き上げていき造形していきます。

LCDの解像度次第で細かい造形が可能なので、精密な造形が可能です。ただ、素材がレジンのみなのであまり種類がありません。また、造形後洗浄が必要になるのと、印刷後にバットに残ったレジンを回収する必要もあるので手間がかかります。

最近は5万円台でも手に入るようになりましたし、タフレジンや水洗いレジンなども出てきたので今後に期待な3Dプリンターです。私も最近手に入れて色々試してみている最中です。

3.粉末焼結、粉末接着、熱溶解積層、インクジェットなどなど

粉末状の素材をレーザーや接着剤で固めたり、インクジェットのように細かい素材を積み重ねて造形していくタイプの3Dプリンターです。特徴としては、金属が造形できるものや、色を付けられるものなどがります。

ただ、機材がとても高価で数千万円するものが多いです。個人で所有することは難しいですが、DMMなど3Dプリントサービスを利用することによって安価に使うこともできます。レーザー焼結方式のものは特許が切れたようなので、100万円を切る組み立て方式のものも出始めているようです。いつかは手に入れてみたいですね。

造形時の注意

ここ最近の3Dプリンターはだいぶ安定してきましたが、紙に印字するプリンターのように当たり前に印刷できるものではありません。まだまだ試行錯誤が必要な場合が多いです。

1.素材

積層方式の場合主にABSかPLAを使うことが多いと思います。プリンターのメーカーが出している純正の素材が一番うまく行く可能性が高いのですが、だいたい少し高価です。なので、ネットで探して安い物を探して、純正以外のものを試すと、設定があわず全然うまくいかないなんてこともあります。

仮にうまくいったとしても、同じABSでも素材の会社や生産時期、色の違いであってもうまくいかない場合がありました。湿気によってうまくいかないことや、リールの内側になるにつれ素材が巻かれる半径が小さくなり、曲がりがきつくなって折れてしまうなど素材の保管に対する管理も重要です。

2.温度

積層方式に関してですが、熱で素材を溶かして重ねていくので温度管理も肝心です。素材を溶かす温度ももちろんですが、造形するものの出力先にあたるベットの温度も重要です。また、プリンター自体がオープン型のものは箱に覆われているクローズ型のものに比べて温度管理が難しいです。

夏場は素材が柔らかくなりすぎて送り出すギアに不調が出がちで、冬場はうまくベットに定着されにくいこともあり、造形物が温度差で反ってしまうこともあります。光造形も冬場は温度が低いと反応が悪くなるため、事前にレジンを温めておくなど対策をとっています。

3.印刷方向

これも積層方式に顕著な問題ですが、印刷の方向が強度に大きな影響を与えます。

これは前回ご紹介したバッテリーを外す用の器具です。2個ありますが違いがわかりますでしょうか?この2つの違いは印刷方向です。左のものは横に倒した状態で印刷されています。

なぜそのようなことをするかというと、積層式は積層方向の横から力を加えると剥離してしまうことがあります。そのため力がかかる方向を考えて設計、印刷する必要があります。これがなかなか難しく、腕の見せ所でもあります。

この例ではストラップやキーホルダーにできるホールを追加していますが、簡単に壊れないようそれぞれ方向を考えて設計しています。ですが、右の方の突起部分は弱く簡単に折れてしまいます。

今回のバッテリーを外す器具の場合、アルミの丸棒を旋盤で削り出すのが一番いいと思います。このように3Dプリンターは便利ではありますが万能ではなく使い方など考えて使用する必要があります。3Dプリンターの次は旋盤やCNCフライスが欲しいです。もっと色々なものが作れそうだなぁと、想像が膨らみますね。

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