羽田連絡道、五輪間に合わず 「想定外」の土砂堆積

多摩川河口部に建設中の羽田連絡道路(川崎市広域道路整備室提供)

 多摩川で隔てられている羽田空港と川崎市を橋で結ぶ「羽田連絡道路」の完成時期が2020年東京五輪・パラリンピック後にずれ込むことが23日、明らかになった。河口部の土砂堆積が想定以上だったことなどで工事が遅れ、市は開通時期を「20年7月」から「20年度内」に修正。五輪前の供用開始を断念した格好で、加速する経済活動や観光など多方面への影響が懸念される。

 同日の市議会まちづくり委員会で市側が説明した。

 羽田連絡道路は、羽田空港と、ライフサイエンス分野の研究機関の集積が進む川崎市川崎区の殿町地区(キングスカイフロント)を片側1車線の橋で結ぶ計画。道路延長は約840メートル、橋部分は約600メートルで、市と都、国土交通省が協力して整備している。

 17年に着工し、五輪を見据えて20年7月ごろの開通を掲げていた。だが、着工前に行った測量調査で、多摩川河口部に堆積した土砂が、事前の想定の倍以上となる約18万8500立方メートルに上ることが判明。作業船の航路を確保するため、しゅんせつ工事の範囲拡張を強いられた。

 さらに、地盤の粘度も当初の見込みより高かったことから橋脚の基礎工事の施工効率が低下。台風の襲来なども工期に影響を及ぼした。

 一方、しゅんせつ土砂量の増加や、橋の構造の仕様見直しなどで工事費が約29億7200万円膨らむことも判明。このうち市の負担分は約8億5600万円という。

 連絡道路は成長戦略拠点の形成を支えるインフラとして期待されており、市は道路の開通とキングスカイフロントの整備に伴う経済波及効果が、11年からの10年間で2481億円に上るとの推計も示している。

 市広域道路整備室の河合征生室長は開通効果の発現時期は遅れるものの、著しい低下には至らないとの認識を示し、「五輪は国内外から羽田に人が集まる。日本の強みや市の取り組みをPRできる絶好の機会だったが、最大限発揮できなくなるのは残念」と話した。

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