【MLB】大谷、打者で存在感も…来季の二刀流復活は「チームだけでなく野球界に有益」

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

打撃での活躍で「打者専念論」が浮上も…「彼の能力を制限することになる可能性がある」

 右肘手術の影響で今季、指名打者に専念しているエンゼルスの大谷翔平投手。投手としてのリハビリを順調に進める一方で、今季打率.306、16本塁打、54打点で、OPS(出塁率+長打率).892という好成績を残している。「打者・大谷」のあまりの優秀さにより米専門家から「打者専念論」も浮上する中、米メディアは特集で「二刀流はチームのみならず、野球界に有益になる」と指摘。ピッチャー大谷の完全復活を待望している。

「オオタニに二刀流でプレーさせるべき」と伝えたのは米メディア「ザ・リンガー」だ。「エンゼルスの天才について打席に専念すべきと唱える人間もいる。しかし、来季の先発ローテ復帰はただ単にチームにとっての朗報だけにとどまらない。野球界にとっても有益になるだろう」と、大谷の二刀流継続がMLB全体にもたらすメリットに注目している。

 昨年10月に受けた右肘靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の影響でスプリングトレーニングもリハビリに費やした大谷は今季、5月7日にメジャー復帰。やや波があるシーズンとなっているが、8月に入ってからは好調を維持している。自己最長の11試合連続安打をマークするなど、8月は19試合出場で打率.358、OPS(出塁率+長打率).974。本塁打は1本にとどまっているが、バットから快音を響かせ続けている。

「仮にオオタニが打撃好調を維持し、シーズンを素晴らしい形で締めくくった場合、その成功によってこれまでのキャリアを共にしてきた彼の役割(二刀流)に関する議論が、再び巻き起こることになるだろう」

 昨季はベーブ・ルース以来となるメジャー100年ぶりの二刀流として、ア・リーグ新人王に輝いた。だが、今季は打者に専念して優秀さを示していることにより、オフには二刀流の是非に対する議論が噴出することになると予想しているのだ。

 実際に、米メディア「ブリーチャー・レポート」やMLB公式サイトの記者が二刀流継続に疑問を呈する声を上げ、メジャー通算521本塁打で米国野球殿堂入りを果たしているフランク・トーマス氏も大谷に「打者専念」の“ススメ”を唱えた。特集では、こういった意見も紹介。その上で「WARにおいてはフルタイムの野手に専念した方がオオタニはより多くの価値を持つ。そう理論づけることは可能だ。しかし、その差は明確ではない。そして、彼の能力を制限することになる可能性がある」と指摘している。

「二刀流のオオタニがいない世界は楽しみの少ない世界」

「打者・大谷」はメジャー2年目で非凡な数字を叩き出している。キャリア打率.293、出塁率.361、長打率.545という成績で、wRC+(Weighted Runs Created Plus)というセイバーメトリクスで用いられる総合的な攻撃の指標では「143」という数値を叩き出していると特集では紹介。昨シーズンの開幕から500打席以上を記録した打者の中では、大谷の「143」という数字はメジャー15位だったという。

 さらに、平均92.7マイル(約149.2キロ)という大谷の打球速度は、リーグ上位3%に入っているというデータも紹介。一方で、打球の発射角度は昨年の12.3度から6.1度と低くなっているが、特集では「もしも、ゴロの打球の傾向を修正できるなら、彼は柵越えを量産し始めるに違いない。特に彼のコンタクト率と三振率の改善を考慮するならば」と大きな伸び代があることにも言及している。

 エンゼルスのチーム事情からも「投手・大谷」の完全復活は不可欠だという。「エンゼルスはどの球団よりも切実に先発投手を切望している」「投手補強がエンゼルスのプレーオフ進出の唯一の道。そして、オオタニは最も確実なチーム内の補強源となる」と記事では分析。エンゼルスは今季も投手力が大きな課題となり、苦しい戦いを強いられてきた。

 特集は最後に「二刀流・大谷」の存在がいかに素晴らしいものであるかを強調し、締めくくられている。

「昨夏から我々が学んだことは、二刀流のオオタニがいない世界は楽しみの少ない世界ということだ。ピッチャー大谷が役割を担えないと証明するまでは、この青年を二刀流でプレーさせようじゃないか」

 アメリカの野球ファンに喜びをもたらす男と称賛された大谷。来季のMLBで二刀流復活は大きなトピックになりそうだ。(Full-Count編集部)

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