「ミゲル墓所」評価の基礎資料 発掘調査の学術報告書2冊発行

「報告編」と「分析・考察編」の2冊で構成する発掘調査報告書

 16世紀にローマ法王に謁見(えっけん)した天正遣欧使節の一人、千々石ミゲルの埋葬地と推定される墓所(長崎県諫早市多良見町)で実施した発掘調査の学術報告書が発行された。出土品などの成果をまとめた「報告編」と、専門家の「分析・考察編」の2冊で構成している。
 刊行した「千々石ミゲル研究・顕彰会」(立石暁会長)は、ミゲルがキリスト教の信仰を棄(す)てたとされる謎の解明に向け、学術的評価の基礎資料としての活用に期待を寄せている。
 発掘調査は2014、16、17年の3回。17年の3次調査は、顕彰会の前身にあたる民間組織「千々石ミゲル墓所発掘調査実行委」が実施した。キリシタン遺物とみられるガラス製の玉や、衣類などを収める長持(ながもち)を用いた棺、錠前などが出土した。成人女性とみられる歯と大腿(だいたい)骨も見つかった。
 報告編では、出土した墓(1号墓)の南側に同じ規模の墓(2号墓)が存在する可能性を指摘。1号墓に葬られていた成人女性をミゲルの妻と推定し、墓所に立つ石碑に夫婦の戒名が刻まれていることなどから、2号墓が「ミゲル本人のものである可能性が極めて高い」とした。継続した発掘調査の必要性を提起している。
 2冊ともA4判。非売品。各800部刊行。県内の公共図書館と関係機関に寄贈した。希望者には2冊千円(別途送料250円)で販売している。問い合わせは事務局長の町田義博さん(電0957.37.2340)。

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