西武、甲子園V右腕がプロで経験した重圧 「甲子園で優勝したら大変ですよ」

西武・高橋光成【写真:荒川祐史】

2014年のドラフト1位で西武に入団した高橋光成は高校2年の夏の甲子園で優勝投手に

 今夏の甲子園では履正社が春夏通じ初の優勝を飾った。NPB入りを果たした選手は、プロの世界で結果を残すことができないと「甲子園制覇」という輝かしい過去が、プレッシャーになってしまうこともある。「甲子園で優勝したら大変ですよ」。そう話すのは、前橋育英高2年時にエースとして甲子園制覇を成し遂げた西武の高橋光成投手だ。

 高橋光は群馬・前橋育英高2年時に夏の甲子園に出場。初戦の山口・岩国商戦では9者連続三振をマークして完封勝利を挙げるなど快投を続け、全6試合中5試合完投、50回を投げ自責点2、防御率0.36と圧倒的な投球でチームを初出場初優勝に導き、一躍甲子園のスターになった。

 3年時は甲子園に出場することは叶わなかったが、14年のドラフト1位で西武に入団、未来のエース候補と期待された。しかし肩の怪我に苦しみ、17年は1軍での登板は7試合、18年はわずか3試合に留まった。

「結果が出ないことで『高校がピークだったな』とずっと言われていました。それが悔しかった。プロでも結果を残して『高校がピークじゃなかった』と言わせるように頑張ってきました。もちろん嬉しかったですけど、甲子園で優勝したら大変ですよ」

 ファームで汗を流す日々に、悔しい思いを募らせていた。「肩も全然治らないし、2軍ではけっこう荒れてました。あんまり言えないですけど…」。そう言って苦笑いを見せた。

マリナーズに移籍した菊池雄星との自主トレで意識改革

「高校の時がピーク」。そんな周囲からの評価を覆しつつある。今シーズンはここまで18試合に登板し、自己最多の9勝を挙げている。結果を残せるようになったきっかけは、オフに菊池雄星投手(マリナーズ)と行った自主トレだ。

「自分の思ったとおりに身体を操れています。雄星さんとの自主トレで、ウエイトをしっかりやりました。トレーナーさんにもいろいろ聞いて身体の使っているところを意識するようになり、寝るときは右肩を下にして寝ないようにしたり、ちょっとしたことにも注意するようになりました」

 今シーズンにかける思いは人一倍大きかった。かつて西口文也投手コーチが付けていた「13」に背番号が変わり、自主トレで多くを学んだ菊池がポスティングシステムを利用してマリナーズへ移籍。さらに、私生活ではオフに結婚をした。「これだけやってくれているんだから、本当に頑張らないといけないなと思います」と、愛妻のサポートも力になっている。

「雄星さんも抜けましたし、背番号も変わりました。今まで以上に頑張らないといけない、結果を残さなきゃいけないという気持ちはありました。13番は西武のエース番号だと思います。なんとかこの番号を傷つけないように、期待に結果で応えたいと思います」

 後半戦は怪我をしないように注意を払い、試合を作れる投球をしたいと意気込む。

「1年間1軍にいたことがないので、これからどんどん異次元の世界になっていきます。肩を怪我しているので、再発しないようにリカバリーをしっかりして、疲労回復に努めていきたいです。そして、今後は誰からもお手本とされるようなピッチャーになりたいと思っています」

 西武のエースへと成長を続ける右腕は、これから甲子園優勝を超える活躍を見せてくれるはずだ。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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