北朝鮮で水害発生も被害情報は錯綜気味

北朝鮮の国営メディアは、国内で起きる様々な事件・事故について基本的に報道しない。そのため海外メディアの多くは、北朝鮮国内の協力者から得た情報に基づいて報道を行う。ただ、国内の移動の自由が制限されている北朝鮮で、居住地域以外の情報まで総合し、客観的に情報を伝えるのは誰にとっても非常に困難だ。

同じ現象なのに、伝える人の立場によって相反する見方が提示されることもしばしばある。今月中旬に北朝鮮北東部に降った大雨について、2人の情報筋が18日に伝えているが、その内容は大きく異る。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは16日、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の羅先(ラソン)に1級警報、17日には穏城(オンソン)郡南陽(ナミャン)労働者区から豆満江の河口までの区域に洪水特別警報が発令されたと報じた。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、今回の洪水で現地では平屋の家屋で土間にある台所が浸水――つまりは床下浸水し、道路が水に浸かって交通が遮断されたものの、道路の破損、人命や農産物への被害は大きくなかった。

2016年8月末に現地を襲った台風10号(ライオンロック)は、甚大な被害をもたらした。増水により崩壊の危機に瀕したダムが予告なしに放水を始め、下流の住宅を押し流し、多くの犠牲者を出した。


しかし、情報筋は兵士と子どもが電柱が倒れたことにより感電死する事故が起きているが、それを除けば大きな被害はなく、一部の農地は水に浸かったが、水は既にはけており、3年前と異なり、大きな被害はなかったと伝えている。

穏城タバコ農場では、すでに2回目の収穫が終わった後で大きな被害はなく、トウモロコシ畑も低くなっているところを除けば問題はなかった模様で、隣接する会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)でも洪水による被害は発生していないと情報筋は伝えている。

「当局が最も気を使っている旺載山(ワンジェサン)などの革命史跡地に向かう道も、アスファルト舗装されているため、全く被害がなかった」(情報筋)が、未舗装道路の一部に穴が空いたため、当局は工場、企業所、農場に割り当てた上で補修工事に当たらせている。現在は、真砂土を集めて運び、穴を埋める作業が行われている。

一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋は、被害は深刻だと伝えている。

会寧(フェリョン)以北の地域では田畑が水に浸かり、収穫が期待できない状況となっている。会寧、穏城、セビョル、羅先で被害がひどく、豆満江が増水により氾濫したと伝えた。

溢れた水が田畑を埋め、被害が発生したのに当局は事態の把握をするだけで、農民の暮らしに何の対策も出せずにいる」(情報筋)と伝えている。

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