ラグビーW杯開幕

 過去7度のラグビーワールドカップ(W杯)でわずか1勝だった日本が4年前の第8回大会で、強豪の南アフリカを破り、歴史的3勝を挙げたことについて、元日本代表の平尾誠二さんが「新境地に達した」と胸を張ったのは亡くなる7カ月前だった▲2016年春、長崎市であったシンポジウムに出席。既に闘病中だったはずだが、代表選手への思いを熱く語った。「世界一のハードワークを重ねてきた。今どき猛練習ははやらないが強制ではなかった。やらされているうちはまだまだ」▲世界と互角に戦うためには何が必要か。泥臭さ、自主性、たゆまぬ努力…。選手、指導者として栄光も大敗も経験した「ミスターラグビー」の言葉は、苦境の中で踏ん張る人への激励にも聞こえた▲W杯日本大会の開幕が来月に迫った。選手たちはこの4年間でさらに進化し、「史上最強」の呼び声もある▲県内で試合はないが、日本と同じ1次リーグA組のスコットランドが開幕前から長崎市に滞在。トンガも期間中に島原市で調整し、市民との交流も予定されている▲東京五輪・パラリンピックの陰に隠れがちだが、ラグビーW杯も五輪などと並ぶ世界3大スポーツイベントの一つ。日本ラグビー界が長年の苦難と挫折を乗り越えて築き上げた代表チームの集大成を見届けたい。(真)

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