【見たさ 逢いたさ 想いが募る】越中八尾おわら風の盆

人口約20,000人の富山市八尾町には、9月1日から9月3日までの3日間に、全国から200,000万人もの観光客が訪れます。富山駅は、東京駅から新幹線で2時間ほどですから、意外に近いですね。目指すのは、300年以上の歴史を誇る「おわら風の盆」。唄と演奏の「地方(じかた)」と揃いの浴衣の「踊り手」が、「越中おわら節」にあわせて町内を踊り歩く「町流し」に、八尾町は幻想の祭りに3日間浸ります。

日本で最もロマンティックな祭りのひとつ「越中八尾おわら風の盆」

日本に祭りは数多くあるものの、最もロマンティックな祭りのひとつが、「越中八尾おわら風の盆」ではないでしょうか。哀愁を帯びた胡弓の音色、顔が見えないほど深く被った編笠、音もなく現われるたおやかな踊りには「静の美しさ」があります。高橋治氏の小説「風の盆恋歌」の舞台にもなりました。

おわらの踊り手の条件

「越中八尾おわら風の盆」のしなやかな踊り手には、条件があります。

踊り手の条件

●25歳以下の未婚

●風の盆の会場周辺の地区出身であること

おわらは、「東町・西町・今町・上新町・鏡町・下新町・諏訪町・西新町・東新町・天満町」の10の旧町内と、井田川を挟んだ対岸の「福島」の11町によって踊られます。

かつて若者が多かった頃は、踊り手が多くなりすぎて町が用意する揃いの衣装が足りなくなるということから、25歳を区切りに踊り手を引退する暗黙のルールができたそう。踊り手の引退後は、運営などの裏方に回るか、おわらの唄い手や楽器の演奏をする地方(じかた)へ。ただし、最近は若者の人数が減ってきたため、おわら人口の少ない小規模の町は踊り手を確保するのに苦労しており、30歳ごろまで踊る人もいるそうです。

女性の踊る「女踊り」は、昭和初めに初代花柳吉三郎が芸者さんに振り付けた、艶やかな踊り。当時「女踊り」は花街鏡町の芸者さんが踊り、「男踊り」は「甚六会」が踊りました。現在は中学生や高校生も踊っており、10代の若い女性に艶やかな色気が出せるとは驚き。ただし、小さな子供のころから風の盆の演舞会に出場して、昼の町流しでも大人について踊り、踊り手として十分な経験を積んでいます。

おわらの舞台 日本の道100選に選ばれた石畳の坂道

「日本の道100選」の八尾諏訪町の通りは石畳が敷き詰められ、道の両側には「エンナカ」と呼ばれる用水が流れています。ゆるやかな坂道には灯りがともり、用水の水音が効果音になり、「おわら」の最高の舞台演出が出来上がります。諏訪町の町並みの美しさに、なんとも言えぬ風情を感じるでしょう。

「風の盆」の名前の由来

おわらは、9月1日から3日の「二百十日の風の厄日(農家の三大厄日のひとつで、台風到来の時期)」に、収穫前の稲が風の被害に遭わないよう風神鎮魂を願うことから、「風の盆」と称されました。また、富山の地元では休みのことを「ボン(盆日)」という習わしがあったと言われます。

恋の歌 恋の踊り

おわらの魅力のひとつには、切ない恋の歌詞にあります。初秋の静かな祭りに良く似合う歌詞ですね。

越中おわら節

「見送りましょうか峠の茶屋まで

人目がなければあなたの部屋まで」

「もしや来るかと窓押し開けて

見れば立山オワラ雪ばかり」

「見たさ逢いたさ想いがつのる

恋の八尾はオワラ雪の中」

(越中おわら節より、抜粋引用)

男女2人の踊り手による「男女混合踊り」は、バレエでいえばパ・ド・ドゥ、しっとりした色気があり、踊りの中でも人気。11町中の「今町」がいち早く取り入れたと言われています。

おわら風の盆 前夜祭

9月の「おわら風の盆」本祭に先駆けて、8月20日から前夜祭が開催中。11町が日替わりで開催担当となり、本祭の直前の11日間に、1日1町内が町流しと輪踊りを行います。本祭混雑緩和のためもありますが、お気に入りの見たい町の踊りをゆっくり見られると好評。

おわら風の盆 前夜祭

開催期間:8月20日(火曜日)~8月30日(金曜日)

前夜祭「おわらステージ」

会場:八尾曳山展示館『観光会館』ホール(有料)

開場:午後5:30

開演:午後6:30~午後7:50(雨天決行)

前夜祭「各町内」

開催時間:午後8:00~午後10:00(降雨時中断)

内容:輪踊りと町流し

毎晩、1町内が輪踊りや町流しなどを行います。町内によっては町流しを行わないことがあります。

輪に入って一緒に踊る場合には、必ず町内役員の指示に従ってください。

各町内の日程(令和元年)

開催日開催支部前夜祭会場

8月20日(火)天満町天満町通り

8月21日(水)東新町若宮八幡社・東新町通り

8月22日(木)東町東町通り

8月23日(金)下新町下新町通り

8月24日(土)西新町西新町通り

8月25日(日)今町今町通り

8月26日(月)上新町上新町通り

8月27日(火)福島ふれあい広場・駅前通り

8月28日(水)諏訪町諏訪町通り

8月29日(木)西町西町通り

8月30日(金)鏡町鏡町通り

前夜祭のパンフレットはこちら

http://www.yatsuo.net/kazenobon/guide/downroad/2019_zenyasai_pamphlet.pdf

風のようにふと現れる、不思議な町流し

おわらの町流しは、11町がそれぞれ一団となって、町の通りを唄い踊りながら流すもの。おわらの祭りの一番人気ですが、予告もなくふと現れる不思議なイベント。スケジュールは決まっていますが、実際にはなかなかスケジュール通りに行われないそうです。

町流しの注意ポイント

●17〜19時は踊り手達の休憩時間なので、見られません。

●待っているほとんどが観光客で、聞いても正確な情報がはつかめないので注意。

●人気ロケーション

鏡町、おたや階段

上新町、日本の道百選通り

おわら風の盆 本祭 9月1日〜9月3日

おわら風の盆 本祭

【開催期日】2019年9月1日(日)〜9月3日(火)

【開催時間】9月1日/2日:午後3:00~午後11:00(但し、午後5:00~午後7:00は夕食・休憩のため踊っておりません。)

9月3日:午後7:00~午後11:00(午後7:00以前は、一切踊っておりません)

【開催場所】富山県富山市八尾町

【公式サイト】http://www.yatsuo.net/kazenobon

令和元年 おわら風の盆 ガイドマップ

http://www.yatsuo.net/kazenobon/guide/downroad/2019_guidemap.pdf

https://youtu.be/RX4FjpNajwM

「おわら風の盆」富山市八尾町/富山市広報課

深夜から朝方の町流し

おわら風の盆はどの町内も午後11:00までで終了しますが、午後11:00以降も気の合った5~10人が自然に集まり、町を流し歩くこともあります。23時以降になると、揃った浴衣ではなく一人一人別々の浴衣でおわらを踊っていることがほとんどで、おわら卒業生の25歳上の既婚の女性や、女性の胡弓や三味線、唄い手などが出現することもあるそう。観光客のための踊りが終わった深夜は、年齢や性別の縛りを取り払い、ベテラン勢も参入して、自由におわらを楽しむ時間。編笠を取って自分に戻り、思うまま踊ります。アフターおわらなので、必ずしも行われるとは限りませんが、祭りの本来の姿はこの時間帯に見られそうですね。

見送りおわら

祭りの最終日が終わり、翌朝の一番電車を見送ってくれる早朝のおわらが「見送りおわら」。JR高山線の始発電車を、駅のホームで福島町がおわら踊りで見送ってくれるもの。おわらの想い出を最後に目に焼き付けて欲しいという粋な計らい。踊り手の思いやりと心意気に、思わずホロリときますね。

見たい、逢いたい、想いが募る「越中八尾おわら風の盆」。北陸の静かな心に残る祭りを、今年こそ見に出かけたいものです。

写真提供:公益社団法人 とやま観光推進機構

参考

越中八尾おわら風の盆

おわら風の盆案内ブログ(トドの戯言)

【オススメ!深夜の八尾おわら風の盆】ベテラン踊り手達が菅笠をとって踊り出す! とやま暮らし

【おわら風の盆2019】これを読めばOK!駐車場,見どころ,交通規制,お薦めスポット とやま暮らし

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