驚異的なスピードで人口が増え、経済が発展しているフィリピン。「発展途上国」というイメージが強いフィリピンですが、近年では教育環境も少しずつ発展しています。そんなフィリピン・セブ島の公立小学校で「Comuputer Education」の授業を見学しました。
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フィリピンのパソコンルーム
見学したのは、セブ島のMabolo Elementary school。フィリピンの小学校は、スポーツ大会やさまざまなコンテストなどでいい成績を残した学校に対して、補助金が出る制度があります。Mabolo小学校は、それらの大会やコンテストで優秀な成績を残し、政府から受けとった補助金を使って、数年前にコンピュータールームを充実させたそうです。フィリピンの公立小学校の中でも先進的なMabolo小学校のパソコンルームの様子が下の写真です。
30台以上のパソコンがあり、OSはWindows 7 でした。最新のOSではないものの、日本の小学校でも現在もっとも使われているOSはWindows 7なので、決して時代遅れではありません。
高価なものであるパソコンを少しでも守るために、すべてカバーがかけられています。またパソコンの天敵である砂埃対策のため、パソコンルームは土足禁止となっていました。子どもたちは部屋の外で靴を脱いでパソコンルームに入ります。
フィリピンのサイエンスクラス
この日見学したのは、小学5年生の「サイエンスクラス」。フィリピンには、サイエンスクラスと呼ばれる特別なクラスがあります。日本で言うところの「特進コース」に近く、上位の成績の子どもたちで編成されるクラス。入学時の成績をもとに編成され、学年が上がる時期にも、テストの成績次第で編成が変わることがあります。
フィリピンは子どもの数がとても多く、1つの小学校に1000-2000人以上の子どもがいます。この人数に対して、パソコンルームが1部屋では足りません。それに加えて、サイエンスコースでは理数系の授業が重視されています。そのような背景から、Mabolo小学校では通常クラスの生徒がパソコンを使う機会はとても少ないとのこと。「Home Economics」という技術家庭科のような時間の中で、少し扱います。一方でサイエンスクラスの時間割には、なんと毎日50分のComputer Educationの授業がありました。
限られたリソースの中では、誰もが平等に学習機会を設けるということの難しさを実感します。それと同時に、サイエンスコースには毎日50分もComputer Educationの時間を設けるフィリピンの時間割からは、IT教育がとても重視されていることがうかがえます。
プレゼンテーションの授業を見学
5年生のサイエンスクラスの授業で、テーマは「プレゼンテーション」について。
マイクロソフトのPowerPointを使って、プレゼンテーション作成の練習をします。PowerPointを使うのははじめての様子。「アプリの起動方法→テーマ(背景)の選択→タイトルの入力方法→文章入力の方法→アニメーションの挿入方法」という手順で授業が進められていきました。
この日のプレゼンテーションのテーマは「All about myself」。つまり「自己紹介」のプレゼンテーションです。子どもたちは自分の名前や誕生日、自分の好きなことなどを記入していきます。印象的だったのは、10本の指をすべて使ってタイピングできる子どもたちが多かったことです。人差し指だけを使ってタイピングしていた生徒は3割程度。
セブ島の母国語はビサヤ語ですが、フィリピンでは小学校3年生からは一部の教科を除いて、第二言語である英語を使って授業が進められます。この授業でも、先生が使う言語は英語で、子どもたちも英語を使ってスライドを作成していました。
パソコンが好きな生徒が多いのか、はたまたサイエンスクラスには集中力が高い生徒が多いのか、とにかく授業中はとても集中している生徒が多かったようです。
先生へのインタビュー
授業終了後に、今回の授業を担当したMrs. E.Aguanta先生にインタビューしました。
ーー先生はどこでコンピューターを学びましたか?
先生大学で「Comuputer Educationの先生」になるための教育を受けました。この学校では、複数のクラスのComuputer Educationの授業を担当しています。
ーー授業で困ることはありますか?
先生たまに一部のパソコンのシステムがダウンして、しばらく使えなくなることがあります。そのよう場合には、1台のパソコンを生徒2人で使って対応しています。
ーー子どもたちはスマートフォンを持っていますか?
先生持っている生徒もいますが、学校にスマートフォンを持ってくるのは禁止しています。一番大きな理由はセキュリティーの問題です。高価なスマートフォンが校内でなくなれば大きな問題になってしまいますので。
見学を終えて
「フィリピンでも、ここまでIT教育が進んでいるんだ」というのが正直な感想でした。少なくとも、約15年前に自分自身が小学校で学んだIT教育と同等かそれ以上の質を感じました。一方で、サイエンスクラスは毎日50分もComputer Educationがあるのに、通常クラスはほとんどパソコンを使える機会がないということには、深刻な教育のリソース不足を実感します。
まだまだ国民全体に質の高い教育が行き届くには時間がかかるかもしれませんが、フィリピンは経済だけでなく、教育環境も少しずつ発展し続けていくでしょう。
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