龍ケ崎市の竜ケ崎線

(上)わずか7分で終点竜ケ崎駅に到着、(下)車両サイドの行き先表示内容は来春以降も変わらず

 【汐留鉄道倶楽部】猛暑の中、茨城県南部のJR常磐線佐貫駅で降りた。ここで乗り換えたのが関東鉄道竜ケ崎線。佐貫―竜ケ崎間を結び距離4・5キロという短さ。春に乗った千葉県の流鉄流山線の5・7キロよりさらに短い。ちなみに竜ケ崎線全線が龍ケ崎市内にある(漢字表記はちょっとややこしいけど)。

 佐貫駅を出るとすぐに小さな竜ケ崎線の駅があった。矢印付きの案内が至る所にあって分かりやすい。構内には路線の年表が掲げられていた。1900(明治33)年開業、とかなりの歴史がある。1971年には「日本で初めて旅客列車のワンマン運転開始」とあった。

 ホームに入線していたのは「キハ532」で1両編成。クリーム色に赤ラインの入ったディーゼルカーだ。車内はがらがらで冷房装置はあったものの、JNRマーク入りの重たい扇風機も懸命に風を送っている。乗務員室真後ろの「一等席」を確保して発車を待つと時間ぎりぎりに運転士が乗り込み、ドアを閉めてすかさずノッチを入れた。

 久しぶりに耳にするディーゼルカー特有の重たいエンジン音が響く。おおむね直線区間の田園地帯を軽快に走る。次の入地駅は小さなホームだけの駅だった。鉄道好きっぽい中年おじさんが汗をぬぐいながらカメラを向けていた。こんなに暑くても私と同じような人がほかにもいるんだなあ。

 入地を発車するとやがて数本のポイントを経由。右にもう1編成の車両が待機する車庫を見ながら終点竜ケ崎に滑り込んだ。乗車時間はわずか7分だった。山手線なら東京―浜松町間くらい。あっという間のできごと。

 それでも1時間に2~3本のダイヤは結構濃密だと思う。よく考えるとわたしの座った席は進行方向左側の乗務員室真後ろ。通常はここに運転士が座るのだが、運転台は右だった。3駅とも片側にしかホームがないから運転台も同じ側にあるという次第。珍しい配置である。駅近くで町おこしに一役買っているというコロッケを食す。美味。

ついでに高さ120メートルの牛久大仏も訪問

 実は常磐線佐貫駅は2020年春に龍ケ崎市駅に改称されることが決まっている。市によると「自治体名と駅名を同じにして知名度向上を目指す」としている。市の玄関口となるJR駅が市名と異なる佐貫駅では何かと不都合、ということなのだろうか。

 その上であれ?と思った。すると今回乗った関東鉄道竜ケ崎線は龍ケ崎市発竜ケ崎行き、なんていうことになってしまうのか。その点を関東鉄道に聞くと「佐貫駅の名称を変える予定はない」。長年使っている駅名をJRの駅名改称に引きずられる必要はない、ということなのか。歴史ある地方鉄道の意地を見せたのか。何であれ、同じ駅に2つの違う駅名が並ぶことになる。

 ちなみに20年春といえば、ナウい命名で話題を呼んだ山手線「高輪ゲートウェイ」駅が誕生する時期でもある。新駅と駅名改称という違いはあるが、新生龍ケ崎市駅がどれだけ話題になって、知名度アップにつながるか。こちらも注目だ。

 ☆共同通信 植村昌則

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

© 一般社団法人共同通信社