木星の新しく見つかった衛星5つの名前が決定。命名ルールを解説

アメリカのカーネギー研究所は8月23日、今年の2月から4月にかけてTwitterを通して募集した木星の衛星5つの名前が、国際天文学連合(IAU)によって正式に決定したことを発表しました。

■発見済みの木星の衛星は合計79個に到達

名前が募集されていたのは、同研究所の天文学者Scott Sheppard氏によって発見され、2018年7月に発表された12個の衛星のうち5つ。この発表によって、木星の衛星の数は合計79個に達しています。Sheppard氏らは数多く寄せられた応募すべてに目を通し、最もふさわしいと判断した名前を選び出してIAUに提出していました。

今回、正式に決定した衛星の名前とその由来は、以下の通りです。日本語の発音表記は筆者によるものなので、今後国内の観測所や研究機関などで用いられる読み方とは異なる可能性があることをご承知下さい。

Pandia(パンディーア):仮符号「S/2017 J4」。ギリシア神話における主神ゼウスと月の女神セレーネの娘で、満月の女神。エルサの妹にあたります。

Ersa(エルサ):仮符号「S/2018 J1」。ゼウスとセレーネの娘で、露(つゆ)の女神。パンディーアの姉にあたります。

Eirene(エイレーネー):仮符号「S/2003 J5」。ゼウスとテミスの娘で、ギリシア神話における平和の女神です。

Philophrosyne(フィロフロシューニー):仮符号「S/2003 J15」。ゼウスの孫娘で、歓迎と親切の精神。エウフェーメーの妹にあたります。

Eupheme(エウフェーメー):仮符号「S/2003 J3」。ゼウスの孫娘で、称賛と吉兆の精神。フィロフロシューニーの姉にあたります。

ちなみに「仮符号」というのは、新しく見つかった天体に付与される「仮の名前」です。たとえばPandia(パンディーア)に与えられていた仮符号「S/2017 J4」は、「2017年に木星で見つかった4番目の衛星」という意味になります。

■命名ルールは厳格に定められている

名前の由来を見てみるとわかるように、いずれもギリシア神話のゼウスに関係したものであることがわかります。これは、IAUが定めた天体の命名に関するルールに従っているためです(命名されたタイミングによってはルールに沿っていないものもあります)。

木星の衛星の場合、まず「ギリシア神話のゼウス、またはローマ神話のユピテルに関連した名前」である必要があります。さらに、「順行(木星の自転と同じ方向に周回)する衛星は末尾が“a”で終わること」または「逆行(木星の自転とは逆方向に周回)する衛星は末尾が“e”で終わること」という条件も存在します。このほかにも、すでに別の天体で使われている名前はもちろん使えませんし、文字数の制約などといった条件も満たさなければなりません。

なお、太陽系内の天体ではありませんが、IAUの創立100周年を記念して、太陽系外惑星の命名キャンペーンが現在開催されています。日本から応募できるのは「かんむり座」の方向およそ410光年先にある恒星「HD 145457」と、その惑星「HD 145457 b」です。

締め切りは9月4日(水)正午(日本時間)まで。天体の詳しい情報などは、国立天文台の特設ページ(https://prc.nao.ac.jp/iau/exoworlds2019/)で確認できます。この機会に応募してみてはいかがでしょうか。

Image Credit: NASA
https://carnegiescience.edu/news/results-are-jovian-moon-naming-contest-winners-announced
文/松村武宏

© 株式会社sorae