「家族で意見割れるケースも」 京アニ事件犠牲者発表で府警幹部

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【資料写真】京都府警本部

 「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオ放火殺人事件の犠牲者35人のうち、京都府警捜査本部が氏名を明らかにしたのは10人にとどまってきた。京都府警捜査本部は27日、報道機関に残る25人の氏名を明らかにし、経緯を説明した。府警の西山亮二捜査1課長は「早く名前を伝えてほしいという方もいて、家族の中で意見が割れているケースもある」と、遺族の意向を聞き取る難しさを語った。京都府警によると、全犠牲者35人のうち14人が実名発表を承諾し、21人が応じなかったという。

 府警の捜査幹部は「憶測で誤った(安否の)情報が流れるなど実名を公表しないことのデメリット、事件の重大性と公益性、報道機関の過剰な取材を抑制する意味でも公表した方がいいと、総合的に判断した」と述べた。

 発生から発表まで1か月以上を要した点については「いろいろな発表の方法を考えたが、葬儀を終えられたことが一つのタイミング。身元特定に時間を要し、何の罪もない多数の方々が被害に遭われ、ご遺族が息子さんや娘さんの死を受け入れるのは容易ではないと思われる。公表についての意向を遺族に何度もうかがう訳にもいかない。静かにさせてほしい、そっとしてほしいとの遺族の心情がある」と説明した。

 府警は事件発生から半月後の8月2日、映画「涼宮ハルヒの消失」の監督を務めた武本康弘さん(47)ら、男女10人の犠牲者の氏名を公表(うち1人がその後撤回)。公表が一部にとどまったのは、府警が「氏名公表に関して遺族の了承が得られ、葬儀を終えた犠牲者を先行的に公表する」との異例の判断をしたためだ。

 約70人がいた火災現場から次々に京アニの社員が救急搬送され、当初は安否情報が錯綜する中で、京都府警は、遺族らの心情に配慮しながら、DNA鑑定への協力を求めるなどし、犠牲者の身元の公表時期や方法について、慎重に検討してきた。事件発生から1週間近く経ってからようやく、その時点で亡くなっていた34人の身元の特定に至ったこと自体、異例のケースだ。

 京アニ側は府警に対し「実名発表で報道されると、被害者やご遺族のプライバシーが侵害され、ご遺族が甚大な被害を受ける可能性がある」として、匿名発表を強く要請した。その後、報道各社に「(実名発表を)永久に控えてもらうことを、お願いしているのではない」との意向を示している。