マイホーム、ローン審査は通ったけど本当に購入して大丈夫?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、住宅購入を検討しているという40代の共働き高収入夫婦。高額な買い物になるため、なかなか購入に踏み切れないといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

夫婦ともに会社員で、夫は年収900万円、私は800万円ほどです。現在は賃貸住まいですが、子供の通う小学校の学区内に戸建てを購入したいと考えています。建売住宅だと30坪で6500万円、同じ大きさの注文住宅だと8000万円程度します。住宅ローンの審査は通りますが、高額なためなかなか踏み切れず悩んでいます。もし、購入するとしたら、頭金はどれくらい入れたらいいものなのでしょうか? アドバイスよろしくお願いいたします。

<相談者プロフィール>
・女性、40歳、既婚(妻:40歳、会社員)、子供1人(6歳)
・職業:会社員
・居住形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:70万円
(夫:35万円、妻:35万円)
・年間の手取りボーナス額:400万円
・毎月の世帯の支出目安:58万円

【支出の内訳】
・住居費:17万円
・食費:9万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:6万円
・保険料:4万円
・通信費:3万円
・車両費:3万円
・お小遣い:8万円
・その他:6万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:12万円
・現在の貯蓄総額:2000万円
・現在の投資総額:1500万円
・現在の負債総額:30万円


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。今回は、住宅購入のご相談です。

住宅購入は、人生の中でも大変高額な買い物ですよね。頭金をどれくらい入れたらいいのかというご相談ですが、目の前の住居費としての負担だけでなく、将来のお子さまの教育費や、ご自身の老後の準備も含めて適正な物件価格を考える必要性があります。

「自己資金は物件価格の2割」だった理由

一般的に、住宅購入の際に準備すべき自己資金は、物件価格の2割程度と言われていますが、実際はどうなのでしょうか。

なぜ2割の自己資金が必要だと言われているのでしょう。これは、ひと昔前まで、金融機関が物件価格の8割を上限に融資をしていたからです。すなわち、残りの2割は頭金や諸費用などの支払いのために自己資金で準備する必要があったのです。

しかし、現在はどうでしょう。大半の金融機関、フラットを取り扱いしている住宅金融支援機構も含め、物件価格の満額が融資可能となっています。今や、自己資金がほぼなくても、諸費用も含めてローンを組める時代なので、それほど貯蓄が貯まっていない方でも、住宅を購入する傾向が強まっています。

しかし、「借りられる金額」と「返せる金額」は違います。銀行が融資してくれる金額や、現在支払っている家賃をもとに購入計画を考える方がいらっしゃいますが、他のライフプランと絡めて、適正な物件価格および住宅ローンの借り入れ額を検討する必要があります。

ローンを組んだ後に「年間いくら貯蓄できるか」が重要

まず、適正な物件価格かどうかを、収入に対しての返済比率から考えてみたいと思います。

一般的には、収入に対して、住宅ローンの返済金額の比率は20%~25%以内に抑えるべきといわれています。ご相談者の世帯での年収が約1700万円です。

年収(1700万円)×年間返済比率(20%~25%)
=340万円/年~425万円/年÷12ヵ月
=28万3000円/月~35万4000円/月

返済比率から考えると、月々28万3000円~35万4000円となります。仮に頭金ゼロでローンを借り入れると、以下のとおり一応返済比率の中には納まります。

とはいえ、現在の家賃17万円と比較すると、返済額が月々6万円以上増えるので、今の生活を継続するとなると、月々の貯蓄は今まで通りできないことになります。仮に今の家賃に月々の返済額を合わせると、ボーナス併用でのローン支払いは下記のようになります。

ご相談者は、年収に対して手取りのボーナス比率が高めですが、会社の業績などで、ボーナスの変動率が高いようなお仕事の場合は注意が必要です。いただいた情報ですと、月々の貯蓄額しか記載されていませんが、もしボーナスからの貯蓄額がないとすると、生活の見直しが必要となります。

月々返済のみでローンを組むか、ボーナス併用で組むか、いずれにしても住宅ローンを組んだ上で「年間でいくら貯蓄できるか」が重要となります。

教育費と老後資金、いくら貯蓄できればOK?

このように考えると、今回のご相談のケースだと、購入の際の諸費用については、自己資金で準備する必要がありますが、頭金については、住宅購入後の生活設計次第で変わることが分かってくるかと思います。今回、限られた情報の中ですが、参考までに概算で考えてみましょう。

住宅購入以外の大きな経済的な目標を、教育費と老後の資金準備としましょう。

仮にお子さまの今後の教育費について、中学校から大学までを私立で考えると約1500万円ほどかかります。

次に、老後の生活費準備についてですが、まず収入である公的年金については、現在の収入が続くと仮定した場合、お二人で概算で年間約430万円を65歳から受け取ることになります。その時の生活費ですが、現在の生活費をベースに考えると、家賃、教育費を差し引くと月々35万円です。もし、ボーナスのうち半分を貯蓄に回しているのであれば、年間で620万円となり、公的年金との差額で年間約190万円ほど貯蓄を取り崩す計算となります。

90歳まで生きると仮定すると、190万円×25年間で、4750万円が必要ということになります。もし退職金がご夫婦合わせて1500万円とすると、3250万円を65歳までに準備する必要があります。

実際は、教育費は年間の収入の中から拠出できる部分もありますが、今回単純にこの金額を40歳から65歳までの25年間で準備すると考えると、以下のようになります。

1500万円(教育費)+3250万円(老後準備)=4750万円
4750万円÷25年間=190万円/年

すなわち、新たに住宅購入をした上で、年間平均約190万円の貯蓄を25年間継続できるかどうかがポイントとなります。

住宅購入の前に確認したい4つのポイント

今回、概算での回答になってしまいましたが、実際に購入を検討される際は、現在の生活費について年間で整理した上で、専門家によるシミュレーションを作成されることをおすすめします。その際のポイントは4つです。

1.物件価格とは別に諸費用がいくらかかるか:こちらは自己資金で準備しましょう。
2.子供の教育や老後の生活など今後の経済的目標について具体的にいくらかかるか:今後の年間貯蓄額の目安になります。
3.2の年間貯蓄目標を達成するためには、いくらのローンに抑えるべきか:物件価格や頭金の目安になります。
4.ローンを組んだ後の計画的な返済計画及び生活設計を実施する:理想の生活の実現に一歩近づきます。

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