【MLB】マリナーズ一筋、ヘルナンデス イチロー、岩隈、菊池を迎え入れた大エースの功績

マリナーズのフェリックス・ヘルナンデス【写真:Getty Images】

“キング”の愛称で知られるマリナーズの大エース、ヘルナンデス

 マリナーズのフェリックス・ヘルナンデス投手は今では珍しいフランチャイズ・プレイヤーだ。2005年以来15年にわたってマリナーズ一筋で投げ、現役投手では第5位の169勝(132敗)を挙げている。

 ベネズエラ出身の右腕は16歳で頭角を現し、複数球団の争奪戦の後、2002年にマリナーズ入団。マイナーで圧倒的な数字を残して2005年、19歳でメジャーデビュー。翌2006年には12勝を挙げてエース格にのし上がった。当時のマリナーズでは、2004年にMLB記録の262安打を記録したイチローがスーパースターとして君臨。さらにこの年、城島健司が正捕手として入団。ヘルナンデスとバッテリーを組んだ。

 100マイル近い速球に加えて、低めに鋭く決まるチェンジアップ、シンカーなどの球種を操り、ゴロを打たせる安定感のある投球だった。堂々たるマウンドさばきから「キング」というあだ名がついた。日本のファンは「社長」とも呼んだ。

 2009年には19勝で最多勝、2010年、2014年には防御率1位。2013年にはサイ・ヤング賞を受賞。2012年には完全試合も記録している。2013年に7年総額1.75億ドルの大型契約を結ぶ。イチローが前年にヤンキースに移籍したこともあり、ヘルナンデスはマリナーズの「顔」になった。

2012年は岩隈久志(現巨人)とマリナーズで2枚看板として活躍

 2012年には岩隈久志が入団。ヘルナンデスと岩隈は「投の2枚看板」として活躍した。しかし、2017年頃から成績が下落、特に昨年は被本塁打が急増した。それでも、2019年5月11日のレッドソックス戦で史上36人目の2500奪三振を記録した。

21世紀以降(2001年~)の奪三振5傑(8月26日時点)

1 サバシア 3080奪三振(ヤンキース)
2 バーランダー 2945奪三振(アストロズ)
3 シャーザー 2641奪三振(ナショナルズ)
4 グリンキー 2585奪三振(アストロズ)
5 ヘルナンデス 2505奪三振(マリナーズ)

 ヘルナンデスはこの中では唯一、移籍を経験していないフランチャイズ・プレイヤーだ。マリナーズの勝利数(169)、奪三振数(2505)、500イニング以上投げた投手の防御率(3.38)でも歴代1位。ちなみに岩隈は勝利数(63)は7位、奪三振数(714)は8位、防御率(3.42)は4位。セーブ数1位は佐々木主浩(129)だ。

 来年はチームに選択権のある1年100万ドルのオプションが設定されてはいるが、ヘルナンデスの契約は今年限り。1986年生まれ、4月8日に33歳を迎えたばかりだが、15年間第一線で投げてきた消耗は大きいようだ。

 日本選手に何かと縁があるマリナーズだ。ヘルナンデスは今季、イチローの引退を見届け、菊池雄星のローテ入りを迎え入れている。5月13日に右肩の張りで負傷者リスト入りし、8月24日(日本時間25日)のブルージェイズ戦で復帰した。日本のファンにとっても「社長」ヘルナンデスの今後が気になるところだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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