フォロワー数ランキングで分析、「外食」の有望銘柄はどこ?

投資初心者によくある悩みの1つとして、個別株を買おうにも、どの銘柄を選べばいいのかわからない、というものがあります。そうした際にも選びやすい代表的な業種が「外食」ではないでしょうか。

店舗が身近な場所にある企業であれば、どの程度にぎわっているのかが一目瞭然ですし、株主優待で食事券などがもらえる銘柄が多いのもメリットです。しかし一方で、競争の激しい業界でもあるため、業績の浮き沈みが大きいともいえます。

外食業界の有望銘柄を探し出すには、どのような点に注目すべきなのでしょうか。今回は、外食銘柄の見極め方について解説したいと思います。


「安くておいしい」だけでは集客できない

現在、日本の多くの外食店の価格水準は、先進国の中では低いといえます。1990年代では日本の物価水準は先進国でも高かったのですが、時代は変わっています。

英国の経済紙「エコノミスト」が発表しているビッグマック指数(2019年1月発表)を見ても、日本は390円(3.71ドル、以下1ドル=105円で計算)と米国の603円、ユーロ圏の480円、英国の430円に比べても低い水準にとどまっています。アジア諸国と比べても、シンガポールの447円、タイの405円、韓国の400円よりも低いのが現状です。

また、壱番屋(証券コード:7630)が開示している国別客単価を見ますと、日本は932円に対して米国は1,580円、シンガポールは1,362円、香港1,288円、英国は2,054円となっています(2019年2月期実績)。先進国だけでなく、アジアの主要都市と比べても日本の客単価は低い水準にとどまっています。

品質にこだわる国民性と長期間のデフレ効果もあり、日本の外食は「安くておいしい」店やメニューが多いのが現状です。しかし、逆に「安くておいしい」店が増えてきた昨今、「安くておいしい」だけでは集客することが難しくなってきたといえます。

外食業界に押し寄せる“変化の波”

外食ではQSC(クオリティー・サービス・クリンリネス)が大切ですが、これらに加えてマーケティング戦略が重要になってくると、いちよし経済研究所では考えています。

外食企業に限らず、日本の企業は「いい商品をリーズナブルな価格で提供しているので黙っていても売れるだろう」という考え方が根強くあります。これは、モノ不足の時代の考え方であり、モノがあふれている現在では、もう一歩進んだ考え方をしなければなりません。

また最近は、スマートフォンの普及により、消費者の購買行動や生活様式が大きく変化しています。従来の「うまい」「安い」だけでは消費者の消費行動には結びつかないのが現状です。

このような状況下においては、商品の伝え方や向き合い方に工夫しなければいけません。今流行っている「インスタ映え」も考慮する必要があるでしょう。こうした現状を考えると外食企業も商品開発部、営業部、広報部、管理本部などがバラバラでなく、全社一体となってマーケティング戦略を考える時期となったと思っています。

有望外食企業は何が違うのか

現在、日本の大手外食チェーンの中では「マクドナルド」「ケンタッキー」「すかいらーく」「吉野家」の売上高が堅調に推移しています。この4社の共通点はマーケティングに力を入れ始めていることです。

特に外部からCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、もしくはそれに準じた人材を誘致している会社が多いのが特色です。CMOとは聞きなれない役職ですが、職務内容は経営に関わるとともに、マーケティング戦略を部署の垣根を超えた「横断的なマーケティング」に対して、責任を持つポストといえます。

上記4社に続き、「丸亀製麺」を展開しているトリドールホールディングス(HD)も、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを革新的なアイデアで集客増につなげた森岡毅氏と組み、新しいマーケティングに取り込んでおり、効果が出始めています。

また、外食は新商品の紹介やキャンペーンの紹介などテレビコマーシャルや店の外観のポスターなどで告知するケースが多いです。場合によっては、新聞チラシに無料券、値引き券などを配布していました。

ツイッターに表れる各社の勢い

しかし近年は、若い層を中心に新聞を定期購読する人が減り、変わってSNSを活用するケースが増えてきました。下表は、各社の公式ツィッターのフォロワー数のランキングです(2019年6月17日現在、前回調査は2018年8月3日)。

1位が「マクドナルド」、2位が「ケンタッキー・フライド・チキン」、3位に「モスバーガー」が続きます。これを見ると、ほとんどの会社のフォロワー数が1年以内で前回調査比10%以上増えています。

伸び率でいうと、「丸亀製麺」「ほっともっと」「くら寿司」「やよい軒」「松屋」「幸楽苑」「カッパ寿司」は前回調査比2倍以上のフォロワー数となっています。ツイッターを活用している年齢層は若い人が多く、顧客層の若返り、女性客の増加などが効果として出てきた、とコメントする会社が増えてきました。

外食企業は一般的に競争激化、人手不足で苦しんでいる会社が多いとみられています。しかし、マーケティングなどを工夫することで、売上高の拡大→利益増に加えて、イメージの向上などによる人手の確保が容易となる可能性もあります。人手不足の中で、上記4社の人手不足感は他の外食チェーンに比べて逼迫感はなさそうというのが、取材をしていて感じるところです。

“企業分析のプロ”が注目する銘柄は?

また、マーケティングに成功した会社は長期間、既存店売上高が安定する傾向にあるのが特色です。消費低迷していると言われている中で、2019年4~6月の営業利益は日本マクドナルドHDで前年同期比40.8%増。すかいらーくHDで同17.6%増、吉野家HDは10.44億円(3~5月の実績、前年同期は1.78億円の営業損失)、日本KFCHDは9.51億円(前年同期は5.15億円の営業損失)と、順調な業績展開となっています。

上記4社に「吉野家」が入っていることに注目しています。同社は「うまい、やすい、はやい」を企業文化としてきました。2000年代初めまで、牛丼業界では吉野家はガリバー的な存在でした。

1990年代では「松屋」「すき家」の店舗数を足しても、吉野家には遠く及びませんでした。しかし現在では、店舗数では国内「すき家」の1,931店舗に対して国内吉野家は1,215店舗(19年7月末現在)と差がついてしまいました。

吉野家としては、客数を増やすためにマーケティングに力を入れ始めたことは注目です。今年に入り、「牛丼 超特盛」「ライザップ牛サラダ」「モンスト盛」(豚丼)「特選すきやき重」など、ユニークなネーミングの商品を投入し、話題となっています。

<文:企業調査部 鮫島誠一郎>

© 株式会社マネーフォワード