懐かし自販機御三家が揃う“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」【昭和のクルマで昭和を探す旅 VOL.2】

遠藤イヅル氏の愛車、R31型「日産 スカイライン セダン 1800G」(7代目・通称“7thスカイライン”/昭和60年式)と“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

今や貴重な存在になったドライブイン&オートレストラン

高速道路がまだまだ少なく、コンビニエンスストアなどもない時代、トラックドライバーやドライブ客のお腹を満たしていたのは、国道や県道の脇にあった「ドライブイン」「オートレストラン」でした。しかし、高速道路の発達と、コンビニエンスストアの登場と進展により激減してしまったのはご存知の通りです。

懐かしい昭和の風景も今や観光名所に

ところが時代が一回りし、ドライブイン、オートレストランともに全国で数少なくなってしまったことで希少性が増加しました。そのため、懐かしさを感じる世代、新鮮と感じる世代ともに一定のファンを生み、新たな観光名所になったところも。ハンバーガーやうどん、トーストの自販機が残されていることが、むしろ売りになっているのです。

ドライブイン&オートレストラン訪問記のアシは、やっぱりこれ!

そこで、そんな懐かしい場所へ、昭和60年式(あえて1985年とは言わない)のクルマに乗って訪問し、その魅力を探ってみるこの企画。第1回は、埼玉県行田市の「鉄剣タロー」をご紹介しました。「懐かし自販機」スポットの聖地としても知られています。

<前回の記事はこちら>

今回は、懐かし自販機がたくさん残る群馬県まで足を伸ばし、聖地のひとつである藤岡市の「ドライブイン七輿(ななこし)」へ行って来ました。もちろんアシは、前回と同じく「日産 スカイライン セダン 1800G」(7代目・通称“7thスカイライン”)というR31型でもっとも安価なグレードです。

これ、直6エンジンのGT系じゃないのがミソ。派手さ、スポーツ性をあまり感じさせない経済性重視な「7thスカイラインの1800シリーズ」は、今やすっかり姿を減らしてしまいました。なおエンジンはCA18S型直列4気筒。ツインプラグが特徴です。燃料供給は電子制御キャブレターで、トランスミッションは5速マニュアルです。

遠藤イヅル氏の愛車、R31型「日産 スカイライン セダン 1800G」(7代目・通称“7thスカイライン”/昭和60年式)/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
遠藤イヅル氏の愛車、R31型「日産 スカイライン セダン 1800G」(7代目・通称“7thスカイライン”/昭和60年式) シンプル過ぎる室内/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

「ドライブイン七輿(ななこし)」は、群馬の聖地

“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」店内[群馬県藤岡市]

ドライブイン七輿は、関越自動車道の藤岡インターチェンジからクルマで10分ほどの場所。ここには「うどん」「ハンバーガー」「トースト」の御三家、“3大懐かし自販機”が揃っていることから、レトロ自販機ファンの間では聖地のひとつに数えられています。

ドライブイン七輿の魅力は、何よりも全体の雰囲気。県道沿いに立つ看板もレトロなら、建物も味わいたっぷりなのです。特に、向かって左側の建物(現在は事務所になっている)は年季が入っています。掲げられたペンキ書きの看板もすっかり色あせ、とってもいい感じに。

店内は、古めの筐体が並ぶゲームコーナー(夜12時には閉まる)と、テーブルと椅子を完備?した24時間営業の自販機コーナーに分かれています。注目の懐かし自販機では、ハンバーガー自販機が富士電機製などのレトロタイプではなく、近代化したモデル(ホシザキ製)になっていますが、富士電機製のめん類自販機、太平洋工業製のトーストサンド自販機は元気に動いています。しかも、めん類は「うどん」と「そば/ラーメン」の組み合わせの2台が稼働しているのだからスゴイ! まさに聖地の趣です。

バーガーもトーストも、チャーシュー麺もウマい!

実はこの訪問も、前回に引き続きレトロ大好きなMOTAのT編集長と一緒なので(笑)、おじさん二人で仲良くシェアして食べることにしました。選んだのは、「チーズバーガー」(230円)、「ピザトースト」(230円)、お店自慢の“自家製チャーシュー”が入った「チャーシュー麺」(350円)と、瓶のコーラです(ちょっと嬉しい)。

可愛い猫が描かれた小さな箱に入ったバーガーと、厚手の専用銀紙に包まれた、アツアツで取り出すのにも一苦労のトースト(笑)は、関東圏ではおなじみ、群馬県伊勢崎市にある「マルイケ食品」のもの。チーズバーガーは定番とも言える安心の味です。ちなみに鉄剣タローにはピザトーストはなかったのですが、これもちゃんとピザの味がして美味!

そして気になるチャーシュー麺は、自販機に書かれた店主からの「おいしいよ」という貼り紙通り、確かに肉厚でとっても美味しいチャーシューでした。シンプルな醤油味のスープもウマいのです。これが350円じゃ申し訳ない!?

富士電機製のめん類自販機「ラーメン」販売機/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
“自家製チャーシュー”が入った「チャーシュー麺」(350円)/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
太平洋工業製のトーストサンド自販機(右)とホシザキ製ハンバーガー自販機(左)/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

「ドライブイン七輿」を守る木村さんご夫妻にお話を訊く

お腹を満腹にして帰る際、建物の左半分はどんな感じなんだろう? 現在は事務所になっているようなのだけど、それにしては大きいな……と思い、少し覗き込んでみたのです。すると、中には古い軽自動車のトラックが。むむ、あれは1965年から発売された、スズキの2代目「スズライトキャリイ」ではないですか!

これは、お店の方に話を聞かねばならないですよね!

そして快く筆者たちを事務所に入れてくださったのは、ドライブイン七輿を経営する木村 清さんと、奥様のふじ子さん。事務所内はスズライトキャリイの他にも、大正や昭和時代を偲ばせる様々な生活用品も展示しています。「古いものが好き」と語るふじ子さんは、ここ「七輿資料館」の館長さんでもあるのです。

七輿資料館には、かつて営業していたドライブインのテーブルと椅子が現存していた/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
かつて営業していたドライブイン(レストラン)のメニューが現存していた/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
ドライブイン七輿内にある「七輿資料館」は昭和の懐かしアイテムが満載/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

清さんの話によると、ドライブイン七輿は昭和50年(1975年)に自販機コーナーとしてオープン。名前は、すぐそばにある「七輿山古墳」から取ったそうです。その後、周辺に飲食店がなかったことから食堂の要望が増え、昭和59年(1984年)に現在の事務所建屋で食堂を開業。しかし3年ほど前に清さんが病気になってしまったことから、食堂だけを閉じたそうです。自家製チャーシューの美味しさは、食堂を経営していたからなのですね! 納得です。

現在は懐かし自販機ブームも手伝って大人気のドライブイン七輿ですが、とはいえ、やはり自販機の維持管理は大変だそうです。でもふじ子さんはこう語っていました。

「機械も頑張っているし、片付けなども、お客さんも手伝ってくれるんですよ。先日も、古い自販機に詳しい小学4年生の子が千葉から来てくれました。小さい子にも頑張って! って言ってもらえるのは嬉しいですね。それと、群馬の人は優しいですから」

レトロで素敵であたたかい、もはや「文化遺産」とも呼べる貴重なこのドライブインを残すためにも、そして木村さんご夫婦のためにも、僕たちはたくさんドライブイン七輿に通って、たくさん食べて遊ばないといけない、という気持ちになりました。木村さんご夫婦、いつまでもお元気で頑張ってくださいね。また、来ます!

“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
コーラを初めて飲んだのは瓶だった、って方も多いはず/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]
これ目当てで遠方から来場する人もいるという「知る人ぞ知る」お宝、ファーストガンダムのゲーム/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

このコーナーはまだ続く!? 次回はどこに行こう?

ということで、「昭和のドライブイン・オートレストランに昭和のクルマで行ってみる!」の第2回をお送りしました。次も懐かしい昭和レトロなスポットに、昭和末期のゲキ渋スカイラインで……行っていいのよね? T編集長!(笑)!?

さて、次はどこにしようかなー。第3回をどうぞお楽しみに!

今回伺ったのは…

■ドライブイン七輿

群馬県藤岡市上落合838

電話:0274-23-0951

営業時間:24時間営業(自販機コーナー)

[筆者:遠藤 イヅル/撮影:MOTA編集部]

七輿資料館に飾られるスズキ 2代目「スズライトキャリイ」(1965-1969)/“群馬の聖地”「ドライブイン七輿(ななこし)」[群馬県藤岡市]

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