吉田戦車、衝動買いした怪獣人形のプレミアに歓喜する

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小学4年生。お母さんたちの間で「進学どうするの?」という話題が当たり前に交わされる年頃だ。いろいろ情報が入ってくる妻は、あせってそれなりに考え、進学塾というジャンルではないようなのだが、週一で、娘を何か勉強する教室に通わせはじめた。

だいたいおわかりと思うが、私は基本、「丸投げ」だ。ふだんは土曜か日曜がその「教室」の日で、電車に乗って都心のほうに行き、2時間半ほど勉強して帰ってくる。

送り迎えは、最初は妻がすべてやっていたが、そのうち「送りだけでいいから、たのむ」という日が増えてきた。迎えは妻が行くので、娘を送り届けたあとあちこち歩きまわり、土日だと罪悪感も少ないため、下町のほうで昼から一杯やったりする遊びを組み込んだりした。

しかし、夏休み。教室は平日開講となり、しかも、仕事が立て込んでいる妻に初めて「送り迎えを、両方ともお願いしたい」と、たのまれた。

学生が夏休みとはいえ、出勤の人々で混んでいるバスと電車を乗り継ぎ、すでに暑い朝9時近く、ふうふう言いながら送り届ける。

いつものくせで「今日はどこに行こうかナ」などと歩きはじめたのだが、「あっ、今日はそういう自由はないんだ……」ということに気づいてしょんぼり。東京駅まで歩き、大丸デパートや八重洲地下街の冷房で、汗だくの体を冷却する。

電車で教室の最寄り駅に戻り、時間調整のため書店に入った。涼ませてもらいつつ、読みたい本や雑誌があったら買おう……。
と、思った瞬間目に入ったのが、レジ横の食玩コーナーである。

ドラゴンボールやガンダムの食玩がメインだが、一個だけ、東宝怪獣の食玩があった。アンギラスだ! 『ゴジラの逆襲』(1955年)でデビューし、『怪獣総進撃』(1968年)など昭和ゴジラに何度も登場している、好きな怪獣だ。

「涼ませてもらい料」として、すかさず購入。540円。教室が終わった娘に報告すると、怪獣になど興味がないくせに「ずるい」と言われた。

帰宅して、箱からとり出して、胴体にしっぽをはめこむ。彩色、造形ともによくできているのだが、なんか顔形がちがうな……、と思い、箱をよく読んでみたら、私が慣れ親しんだ昭和アンギラスではなく、『ゴジラ FIN ALWARS』(2004年)のアンギラスであった。

きらいではないが、どこかヤケクソのような、お祭り怪獣バトル映画だったと記憶する。

やや喜びを減らしつつ、まあいいかと、ネットではどうなってるのか調べたら……。なんと3000円というプレミア価格がついていた。ごめん、「2004年版かよ」などと毒づいてごめん!

アンギラスを抱きしめ、なでさすり、そーっとガシャポンでゲットした『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)のゴジラの横に飾った私です。

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親 1』、最新刊『忍風! 肉とめし 3』(ともに小学館)が発売中!