MotoGP:クアルタラロが語る1周目1コーナーのハードクラッシュ。リンスを避けるために「スロットルを閉じた」

 MotoGP第12戦イギリスGPの決勝レースのオープニングラップ、その1コーナーで緊張が走った。ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)とアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が衝突。激しくクラッシュしたのだ。幸いにもクアルタラロ、ドヴィツィオーゾともに大事には至らず、レースが中断されることもなかった。1コーナーで起こったことを、ライダーのコメントとともに見ていこう。

 オープニングラップの1コーナーに4番手で入ったクアルタラロ。コーナー中盤に差しかかったところでクアルタラロが突如、マシンの挙動を乱す。一瞬起き上がったクアルタラロのマシンはフロントを切れ込ませて転倒。クアルタラロのマシンは、そのややアウト側にラインを取っていたドヴィツィオーゾに対しアンダーカウルを見せる形で倒れ込んだ。

 ドヴィツィオーゾにしてみれば、前方に突然、障害物が出現したようなものである。ドヴィツィオーゾのマシンがクアルタラロのマシンのアンダーカウルから乗りあげ、宙に浮く。ドヴィツィオーゾはマシンとともに、アウト側のエスケープゾーンに叩きつけられて何度も転がった。ドヴィツィオーゾより一瞬先に路面に投げ出されていたクアルタラロも、同様にコースのアウト側に滑っていく。

 エスケープゾーンのアスファルトに落下しグラベルまで転がっていったドヴィツィオーゾのドゥカティ デスモセディチGP19は炎上。ドヴィツィオーゾ自身は起き上がることができず、担架によってコース外に運ばれた。クアルタラロは自力で起き上がって移動している。

■クアルタラロが語るハイサイド転倒の原因

 クアルタラロは、なぜ突然マシンの挙動を乱したのか。クアルタラロのコメントによれば、前方にいたアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)の動きがその原因だった。

「僕の前にいたリンスが少しマシンをスライドさせたので、僕も少し多めにスロットルを閉じた。彼を避けるためにね。そうしてハイサイドが起こった」

観客に手を振り無事を伝えるファビオ・クアルタラロ

 クアルタラロが語るように、1コーナー中盤、3番手につけていたリンスが一瞬、バランスを崩してマシンを起こしている。リンス自身もレース後の会見で、「1コーナーではミスをした。タイヤが冷えていたせいかわからないけれど、クラッシュするところだったんだ」と語っている。

 リンスがマシンの挙動を乱し、それを見たクアルタラロはリンスを回避すべく予期せぬアクセル操作をしなければならなかった。そしてクアルタラロのマシンが転倒した先は、運悪くドヴィツィオーゾが位置取っていたラインだった……。これが、1コーナーで起こった事の顛末のようだ。

 ドヴィツィオーゾは頭を打って一時的な記憶喪失となった。クアルタラロもめまいを訴えたことから、検査のためにメディカルセンターからコンヴェントリー病院に運ばれたと、ドゥカティの公式SNSとペトロナスSRTの公式SNSが伝えた。その後、クアルタラロ、ドヴィツィオーゾのふたりには大きな怪我はないことが確認され、ドヴィツィオーゾはその日中に帰宅したということだ。

 クアルタラロとドヴィツィオーゾにとっては不運なレースとなったが、大きな怪我を追わなかったという点では不幸中の幸いだった、と言うべきだろう。

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