【MLB】田中将大、菊池に痛感させた円熟味 「3球種を上手く」指揮官も褒めた配球の妙

今季10勝目を挙げたヤンキース・田中将大【写真:Getty Images】

田中は7回3安打無失点の好投で日本人初の6年連続2桁勝利を達成

■ヤンキース 7-0 マリナーズ(日本時間28日・シアトル)

 ヤンキースの田中将大投手は27日(日本時間28日)、敵地マリナーズ戦で7回3安打無失点7奪三振1四球と好投し、今季10勝目(7敗)を挙げた。菊池雄星投手との初の投げ合いに“快勝”し、日本投手初のメジャー6年連続2桁勝利を達成。直球とスライダー、スプリットの3球種を絶妙に配した投球でマリナーズ打線を手玉に取った。

 初回、主砲のジャッジが菊池の初球を捉え、中堅バックスクリーンにぶち当てる通算100号の先制2ラン。3回にはガードナーが右翼へ3ランを放っでリードを広げた。序盤で5点の援護をもらい「リズムに乗っていくことができました」という田中は、力みのないフォームから繰り出すスライダー、スプリットが切れ「序盤から効果的に使えていた」と振り返った。

 ヤ軍のブーン監督は、直球を加えた「3球種を上手く配した」と、この日の快投の核心を突くと、試合後の田中はその点を掘り下げた。

「(捕手の)ロマインがそこは引っ張ってくれた。もちろん、自分でもしっかりと考えを持って首を振って投げたり、サイン通り投げるにしても自分なりにしっかり意図を持って投げてはいたので。今日はそれが上手くいって良かったです」

 その“意図”は、初めて迎えた5回のピンチでしっかりと見えた。

 先頭のシーガーに右翼線への二塁打を浴び、この日初安打を許した。1死二塁で一発のあるボーゲルバックと対峙した田中は、相手の心中を見透かしたような配球で攻めた。

「対峙しているバッター1人をどうやって抑えるか」

 初球スライダーでストライクを取ると、2球目はボールとなる148キロの直球を投げ込む。この日の変化球の出来からすれば、相手打者が直球に的を絞るのは当然だった。田中は1球1球、打者の反応を見てそこを感じ取っていたはずだ。

 ボーゲルバックは3球続けてスライダーを見送り、フルカウンドまで持ち込んだ。しかし、田中は「今度こそは」と直球を待つ打者心理を逆手に取り、内角低め135キロのスライダーで勝負。体勢を崩されたボーゲルバックはバットも出せずにあえなく見逃し三振に倒れた。

 2度目に迎えた7回1死二塁のピンチでは、先とは真逆の思考で5番マーフィーを3球で仕留めた。直球を餌にして変化球で揺さぶる組み立てをこの打者には封印。前の2打席でいずれも変化球を打っている相手に対し、まず、直球を選択。2球目も直球で追い込み、最後は外のスライダーで空振り三振に仕留めた。前の2球の残像を利用した変化球勝負に、マリナーズ捕手のマーフィーは“読み負け”した。

 田中は滑らかな口調で言った。
 
「一気にアウトが2つも3つも取れるわけではないので。対峙しているバッター1人をどうやって抑えるかということもしっかりとフォーカスしながらいい投球ができたと思います」

 この日の田中の姿は、得意のツーシームを封印しながら“あるぞあるぞ”と相手打者に思わせ、直球で難なく打ち取る黒田博樹氏(元ヤンキース)に重なった。田中はその先輩黒田氏を超えて日本投手としてメジャー初の6年連続二桁勝利を手にした。

 この日同じマウンドで投げ合い、4回5失点で9敗目を喫したマリナーズの菊池は日本時代も通じて初対決となった田中の投球にこんな感想を寄せた。「全体的なバランス、コントロールだったりとか、本当に僕自身がこれから勝つために必要なものを勉強させてもらいました」。2年ぶりのメジャー日本投手対決で注目された一戦で、田中は菊池に円熟味を溢れる投球術で格の違いを見せつけた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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