芸能記者3カ月、「天才山ちゃん」再考

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 今年5月に大阪社会部から文化部に異動し、約3カ月。記者歴は11年目ですが、文化部では1年生。10年ぶりの新人気分に浸れば「いつまでも新人面してんじゃねぇ」と先輩から喝が入る文化部で、初めての大きな記者会見は、お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山ちゃんこと山里亮太さんと女優の蒼井優さんの結婚報告記者会見でした。映画「花とアリス」で紙コップをトウシューズに華麗に舞った蒼井さん見たさに会見に向かった筆者ですが、終わった頃にはすっかり山ちゃんに夢中に。最近は自民党衆院議員の小泉進次郎さんとフリーアナウンサーの滝川クリステルさんの電撃授かり婚が「令和初のビッグカップル」と話題をさらったので、改めて「令和の奇跡」も振り返りたいと思います。

 山ちゃんと蒼井さんの結婚発表記者会見が開かれたのは、東京都新宿区の有名ホテル。参列者300人規模の披露宴会場とみられる会見場に着くと、部屋の三方をテレビカメラの脚立が囲み、100人以上の記者が集結。記者席の一列目は井上公造氏ら芸能リポーターがスタンバイし、2人の登場をカメラの無数の白いフラッシュが出迎えます。

 冒頭、山ちゃんが緊張のあまりマイクなしで話し始めたと思いきや、男性カメラマンが2人に花を添えるかのように激しく転倒。さらに赤いグローブを付けた相方のしずちゃんこと山崎静代さんがファイティングポーズで登場すると、会場はどっと沸き、一気に温かいお祝いムードに包まれました。

 挨拶も束の間、芸能リポーターからなれそめについての質問が矢継ぎ早に飛ぶわけですが、その端々からうかがえたのは「なぜ蒼井優ほどの女優とイケメンではない山里亮太が結婚できたのか」という、誰もがまず抱いたであろう疑問。投げかけられる問いの一つ一つに、体を乗り出して懸命に答える山ちゃん。まるでトークライブのような会見で、筆者が最も驚かされたのは、山ちゃんの場の空気を瞬時に察知し、切り替える力でした。質問への回答にほんの少しでも報道陣という「聴衆」の熱が下がれば、手を替え品を替え、笑いを起こし、再び引きつけるトーク力。お笑い芸人なら当然、もしくはファンならよく知る実力とお思いの方もおられるかもしれませんが、「ちょっとだれ始めたな」と感じる自分に呼応するかのように空気を変えていく感度と瞬発力に鳥肌が立ちました。

 そう感じたのは私だけではないようで、会見を見たという主婦から真面目なサラリーマン、シニアから個人的に得た感想は一様に「山ちゃんすごい」の好感度アップ。さらに、自虐を織り交ぜながら女優を射止めた非モテ男の喜びに舞う山ちゃんには嫌味がなく、蒼井さんの過去の噂をほのめかすような少しいじわるな質問に「皆さんの目の前にいる蒼井さんと違う蒼井さんを見せてもらっている。皆さんの思う『魔性』から発生する心配は、一切ございません」と潔く断言する姿には思わず、「え、山ちゃん格好いい…」と胸キュン。誰に何と言われようと、こんな風に自分を守ってくれる存在に、蒼井さんの目はぬれていました。

 結婚から幸せが匂い立つのは当然ですが、ツイッターの世界のトレンドワードで「山ちゃん」が1位になるなど、ここまで注目された会見も珍しいですよね。筆者は正直、AmebaTVやユーチューブで会見を見た人の多さに驚きました。カップリングのインパクトに加え、「これからの2人を応援して頂きたい」と包み隠さず赤裸々に語って見せた姿勢に多くの人が好意を持ったのではないでしょうか。個人的には、山ちゃんが明かした結婚を報告した際のコンビのやりとりにグッとくるものがありました。

「しずちゃんが僕に報告した時に言ったのが『真面目に頑張ってればいいことってあんねんな』って。この世界で闘って、真面目に頑張ってたらこんなにいいことあるんだって。不細工だって言われて、気持ち悪いとか色々あったけど、そんな世界を大好きで一生懸命真面目に生きていたら、こんなにすてきなゴールを用意してくれるんだと」

 山ちゃんに蒼井さんを紹介した立役者でありながら、相方を労ったしずちゃん。その大きな優しさも感じられるひと言だと思います。(楡金小巻・共同通信記者)