「油症被害から未来考えて」 諫早の患者・下田順子さん ダイオキシン国際会議で訴え

国内外のダイオキシン研究者らを前に、自らの体験や次世代救済への思いを語る下田さん=京都市、国立京都国際会館

 ダイオキシン類など有害化学物質が混じった食用油により健康被害が広がったカネミ油症。京都市で開催中の第39回ダイオキシン国際会議(25~30日)の特別セッションで、諫早市の油症認定患者、下田順子さん(58)は29日、国内外の研究者らを前にこれまでの被害体験を講演。わが子を襲った体調不良にも言及し「ダイオキシンや環境ホルモンが地球環境を破壊している。危機感を持ち、私たちの被害から未来を考えて進んでほしい」と訴えた。
 国際会議は1980年から毎年、医学や薬学、生態学など世界中の専門家がダイオキシンなどに関する研究報告や意見交換をしている。国内開催は2007年以来12年ぶり。特別セッションは、各国の専門家にカネミ油症や台湾油症について関心を高めてもらおうと日台油症情報センター(東京)が企画し、約80人が参加した。
 1968年に発覚したカネミ油症は、カネミ倉庫(北九州市)が食用米ぬか油を製造する過程で熱媒体のポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入。一部が猛毒ダイオキシン類に熱変化し油症の主因となった。
 五島市出身で、小学校入学前に汚染油を摂取した下田さんは、体中の吹き出物や激しい倦怠(けんたい)感などの症状、差別に苦しんだ半生を語り、「ダイオキシン被害が私たちの人生を狂わせた」と涙ながらに証言した。また、事件から20年以上たって生まれたわが子にも皮膚症状や歯の異常などが現れているとして、「私たちの望みは根本的治療の確立。半世紀前にダイオキシンを食べ、今も苦しむ被害者のことを知ってほしい」と述べた。
 会場で講演を聞いた英オックスフォード大の女性研究者は「心を打たれた。スウェーデンでもPCB汚染が発生している。どんな影響を受けたのか被害者が声を上げることが非常に大事なので、証言を続けてほしい」と発言。同セッション後の交流会で、日台油症情報センター長の藤原寿和さん(72)は「ダイオキシンは直接食べた油症被害者だけの問題ではない。ごみ焼却によるダイオキシンの発生やPCB海洋汚染の問題などが起きており、誰もが気付かないうちに汚染されている可能性がある」と話した。

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