地球はめずらしい惑星?それとも仲間が見つかっていないだけ?

NASA系外惑星探査プログラム(Exoplanet Exploration Program)は8月28日、近年発見が相次いでいる太陽系外惑星と、そこに見られる太陽系との違いについて述べた「Is Earth an Oddball?(地球は変わり者なのか?)」と題したコラムを掲載しました。

■系外惑星の発見手法には制約がある

昨今はsoraeでも系外惑星に関する話題を取り上げる機会が増えていますが、系外惑星を発見する手段として主に用いられているのが「トランジット法」「視線速度法」という2つの手法です。

トランジット法は、系外惑星が恒星の手前を横切る(トランジット)ときに、恒星の光が系外惑星に隠された分だけわずかに暗くなる様子をキャッチする方法です。昨年運用を終えたNASAの「ケプラー」宇宙望遠鏡や、現在観測を行っている系外惑星探査衛星「TESS」などがこの方法を採用しています。

視線速度法は、系外惑星の公転にあわせて恒星が前後左右へと円を描くようにわずかにふらつく様子をキャッチする方法です。恒星の光の波長が手前に動くと短くなり、奥に動くと長くなるドップラー効果を利用するため、ドップラーシフト法とも呼ばれます。あえて言い換えれば、恒星の光の色がほんのわずかに変化する様子から系外惑星の存在を見つけ出す方法です。

2つの手法には、それぞれ特徴があります。まず、トランジット法は「サイズが大きな系外惑星のほうが見つかりやすい」手法です。大きな系外惑星のほうが恒星を隠す範囲も広くなるので必然的に見つかりやすくなりますし、反対に小さな系外惑星は恒星の光にあまり大きな変化を与えることができないので見つけにくくなるわけです。

視線速度法は「質量が大きな系外惑星のほうが見つかりやすい」手法です。木星やそれ以上に重い系外惑星は重力が強く、それだけ主星を大きくふらつかせられるというわけです。

さらに、トランジット法と視線速度法のどちらとも、恒星に近い系外惑星ほど見つかりやすくなります。恒星に近ければ公転周期が短くなり、それだけトランジットや恒星のふらつきをキャッチする機会に恵まれるのです。

このような特徴を持つ観測手法が用いられているため、わずか数日で公転するスーパーアースを複数持つ恒星や、その熱で数千度にまで加熱されてしまうほど恒星の近くを公転するホットジュピターなどが幾つも発見される一方で、地球のように数百日周期で恒星を公転する小さな系外惑星や、何十年もかけて公転する木星のような大きな惑星は、あまり見つかっていないのです。

■地球は本当にめずらしい存在なのか?

同じような惑星が他に見つからないからといって、地球がめずらしい存在と言い切ることはできません。観測精度や観測期間などの問題で、今はまだ偏った系外惑星ばかりが見つかっているとも考えられるからです。答えを得るには、さらなる観測と発見を積み重ねていくしかありません。

NASAのサイエンスライターPat Brennan氏が前述のコラムで指摘しているのは、地球のように岩石質で小さく短い周期で公転する系外惑星と、木星のように長い周期で公転する巨大な系外惑星その双方が同居する恒星系がまだ見つかっていない点です。

太陽系で一番重い惑星である木星は、小さな天体の軌道に影響を及ぼします。木星が無数の小天体の軌道を変化させたことで地球に衝突する天体の数が減り、生命にとって穏やかな環境をもたらしたとする初期の太陽系に関する理論が正しいとすれば、「地球と木星」のペアのような系外惑星が他の恒星で見つかるかどうかが、地球の希少性を判断する上でのキーポイントになるかもしれません。

また、2021年の打ち上げを目指して組立作業が完了したNASAの「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡では、系外惑星の大気を観測することが可能となります。ジェイムズ・ウェッブによって岩石質の系外惑星に大気の存在が確認され、そこに酸素やメタンといった生命の存在を示唆する元素や分子が見つかることも考えられます。

地球はこの宇宙における変わり者なのか、それとも同じような惑星が他の恒星にも存在しているのか。「いまだ暗闇の中にいる」(Brennan氏)人類が答えを得るには、まだ時間がかかりそうです。

Image Credit: NASA
https://exoplanets.nasa.gov/blog/1599/is-earth-an-oddball/
文/松村武宏

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