就職、結婚、出産のとき… 保険はいつから入ればいい?

私の仕事は執筆が中心ですが、仕事をする場所は、喫茶店を転々としながら原稿を書いています。じつは、この原稿も喫茶店で書いているのですが、たまに見かけるのは、若い人に保険を説明している保険営業員の姿です。

そのとき私は、その若者に「必要がどうかをよく考えて!」と声を掛けたいという衝動に駆られます。そこをグッと抑えて、心の中で呟いています「まだ必要ではないんじゃないの……」と(余計なお世話かも知れませんが)。

今回は、「はじめて保険に入る時のタイミング」について解説しましょう。


保険に入っている割合は?

日本人全体の約8割の人が、なんらかの生命保険に入っています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成28年度)。20代でも、約6割の人が保険に入っています。30代ですでに8割超の人が入っています。

しかし、私は、20代、30代の人が保険に入っている割合が、少し多過ぎるのではないかと考えています。というのは、20代、30代は、まだ独身の方が多いのではないかと思うからです。

■男性の未婚率(平成27年度国勢調査人口等基本集計結果)
25〜29歳:72.7%、30〜34歳:47.0%、35〜39歳:35.0%
■女性の未婚率
25〜29歳:61.3%、30〜34歳:34.6%、35〜39歳:23.8%

ちなみに、独身の人が保険に入るのは、「いけない」とは言っているわけではありません。ただ、「あまり必要がないのでは?」と考えるからです。

保険に始めてはいるタイミングで正しいものは?

では、はじめて生命保険に入るとしたらいつがいいのでしょうか? その保険とはいったい何がいいのでしょうか?

保険に入るタイミングで次の3つの内どれが正解?
1.□就職して新社会人になったら
2.□結婚して、共働きでの生活
3.□結婚をして、子供ができたら

正解は3.の「結婚をして、子どもができたら」です。

新社会人になったとき、保険を勧められたが必要だったの? 結婚したら妻から保険に入るように言われたのですが、必要はないのでしょうか?そんな疑問に答えていきましょう。

新社会人には、保険は必要がない?

医療保険は必要ない「×」

新社会人になったら、どんな保険が必要なのでしょうか?また、本当に必要なのでしょうか?

保険を募集しているWebサイトには、新社会人のオススメの保険として、医療保険や資産運用に活用できる保険(終身保険・個人年金保険)、就業不能保険などが上がっています。また、保険会社の営業員には、同じように医療保険や、資産運用型の保険、さらには外貨建ての保険を勧められます。さて、これらの保険は本当に必要なのでしょうか?

はっきり言って、これらの保険に入る必要はありません。

医療保険は、必要性の低い保険です。なぜなら、公的医療制度があるので、自己負担は3割ですし、高額療養費があるので、自己負担は少ないのです。
誰しも老後が心配なので、資産運用になる保険をもとめ、終身保険や個人年金保険が手堅い手段だと思ってしまいがちですが、それも間違いです。

貯蓄性の保険は必要ない「×」

いまは低金利時代で、予定利率はよくありません。

保険と積立預金は必ずしも同じではありませんが、貯蓄的なことだけで言うと、保険というのは、超長期の固定金利です。終身保険、個人年金保険は20年、30年満期の固定金利の積立預金をしているようなものです。ということは金利が上がると損をします。とても合理的とは言えません。

外貨建て保険も、払い込んだ保険料がすべて運用にまわるわけではありません。ですから運用ということを目的とするならばけっして効率的ではありません。老後資金のためならば、iDeCoを利用する方がもっともいいでしょう。

死亡保険は、扶養家族がいない場合は必要ない「×」

次に死亡保険について考えてみましょう。保険会社の営業の人から、「社会人になったのだから、責任も持たないといけない、保険に入った方がいい」といって勧められた経験はありませんか?

しかし、責任を持つということと、保険に入るということは、なんら関係がないと思います。保険のそもそもの役割というのは、「もしもの場合に、困る人がいるときにとても役立つものです。自分が死んでも困る人がいなければ、保険に入る必要はありません。

つまり就職をした人でも、扶養家族などがいない場合は、保険に入るタイミングではないということになります。

結婚したら保険に入るべきなのか?

共稼ぎの場合には、保険はあまり必要ではない「△」

結婚をしたときに、保険に入った方がいいのでは、と言う意見もありますが、必ずしもそうとは言えません。

今の時代は、夫婦共稼ぎの家庭が多くなっています。その場合には、どちらにも収入があるので、もしもの場合があっても、収入がまったくなくなると言うことはありません。ですから、保険はあまり必要ではありません。とはいっても二人分の収入で暮らしていたのですから、影響はあるでしょう。心配な場合には、定期保険を使って少額の保障で備えるのもいいと思います。

専業主婦の場合は、少しだけ必要な場合も「△」

また専業主婦と言う場合には、ご主人の収入だけで生活を支えることになるので、妻は扶養家族になります。この場合は、ある程度の保険が必要になります。夫の会社の死亡退職金、遺族厚生年金がありますし、以前の仕事にり、復帰するという方法で収入を得るということもできるかもしれません。

しかし、妻が心配な場合には、10年更新の定期保険で備えるのがいいでしょう。若い人は保険料が安いです。たとえば、35歳の男性で死亡保険金が1000万円の場合ですと、月額約1500円ぐらいで入れます。

子供のいる家庭では保険は必須

死亡保険は絶対に必要「◎」

子供ができたときは、保険が必須になります。親にもしものことがあると、残された家族は大変です。

まだ小さい子供がいる場合には、大きくなるまでの生活費、教育費でかなりなお金がかかります。教育費だけでも、小学校から大学まで公立の学校の場合は、約2000万円です。これが私立理系になると約3000万円です。これだけの金額になると、貯蓄で対応できる金額ではなくなります。保険の出番です。

子供の将来のためのお金ですから、3000万円以上の大きな保障額になってくるので、収入保障保険で対応した方がいいでしょう。収入保障保険は時間とともに、保障額が減っていきますが、子育て世代には合理的な保険です。収入保障保険は、少ない保険料で大きな保障を得ることができます。

医療保険は「△」

医療保険は、基本的には貯蓄で備えます。ただ妊娠・出産にはトラブルも多いものです。妊娠・出産というのは、病気ではありませんが、女性の場合、妊娠をすると医療保険に入れなくなったり、制限がつくようになります。妊娠のまえに歯の治療と医療保険には入っておいた方がいいかも知れません。医療保険は、妊娠前に入って、無事に出産が終えたら解約すればいいのです。

学資保険はメリットがない「×」

子どもができたら、教育費のために学資保険を利用する人も多いのですが、ハッキリ言って、学資保険はオススメできません。というのも、いまは低金利時代で、予定利率がよくありません。

支払った保険料よりも、受け取る金額が少ないいわゆる元本割れをする学資保険も多いのです。なぜなら学資保険は、貯蓄の機能と保険の機能があります。それゆえ元本を割ってしまうのです。もちろん、払い込んだ保険料よりも多く受け取れる保険もありますが、いずれ増える金額は少ないです。
貯蓄機能として、増やしたいのであれば、「つみたてNISA」を利用するほうが合理的です。

保険を考える場合、大きなリスクは何か、ということを考えれば、保険に入るタイミングがわかってくると思います。

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