土呂久ヒ素苦しみ今も 鉱害研究の出盛さん講演

土呂久鉱害について講演した出盛允啓さん=31日午後、宮崎市・県立図書館

 高千穂町の旧土呂久鉱山の鉱害健康被害(慢性ヒ素中毒症)を研究する宮崎市清武町、皮膚科医出盛(いでもり)允啓(まさひろ)さん(78)の講演会は31日、同市の県立図書館であった。鉱害の歴史やヒ素中毒による皮膚がんなどの症例を紹介したほか、アジア地域で広がるヒ素の健康被害の現状を解説した。
 土呂久鉱害は1971(昭和46)年に明らかになった。出盛さんは、国が慢性ヒ素中毒症を公害病に指定した73(同48)年から県が毎年実施する検診に帯同している。現在も住民を診察しており「がんや内臓疾患で苦しむ人は今も多い」と報告した。
 96年には中国・内モンゴル自治区でヒ素中毒の調査を実施。海外では土壌に含まれるヒ素を井戸水などから摂取して中毒症になるケースも多く、「土呂久の記憶の風化を防ぎ、ヒ素の怖さを宮崎から世界に伝える必要がある。それが最大の予防策」と訴えた。
 講演会は土呂久鉱害について次世代に語り継ぐ事業として県が昨年から実施。同館では8日まで、パネル展を開催している。

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