破格の売り出し、成約ゼロ 人口増狙い広島・神石高原町、1坪8円の宅地

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神石高原町が坪8円で販売している町有遊休地

 広島県神石高原町が人口増を目指して破格の1坪8円で売り出した同町上豊松の宅地5区画が5カ月近くたっても一件も成約に至っていない。これまで県外の2世帯から購入希望はあったが、1世帯は現地見学もしないまま時間が経過している。町は要件を緩和して9月にも再募集する方針だが、過疎高齢化の町に人を呼び込むことはやはり簡単なことではないようだ。

 ▽ソフト面の支援 課題

 宅地は町の東部にあり、平成の大合併前の旧豊松村が15年前に高齢者向けの住宅を建設するために造成した。人口減などで計画が止まったまま遊休地となっていたため、町が町外者を呼び込もうと破格の価格で売り出した。

 応募要件は12歳未満の子どもがいる町外在住の世帯。購入地に3年以内に家を建てる必要があるが、125坪の2区画はわずか千円、72坪の3区画に至っては576円で買える。

 宅地から約1キロ離れた豊松小は児童数17人と町内最少。町は廃校になることを防ぐ狙いもあって、周辺の取引価格と比べても破格の安さに設定したという。だが、これまで申し込みしてきたのは県外在住の2世帯。1世帯は現地に見学に来たが、もう1世帯は申し込みだけにとどまる。

 現場は片側1車線の県道沿い。備後地方の拠点となる福山市中心部まで車で1時間ほどかかる。町は「福山で働く人でも通勤可能」と捉えていたが、周辺部からの申し込みには現時点で結び付かなかった。

 ■アクセスは30倍

 それでも坪8円での販売を公表した直後3日間の町のサイトへのアクセスは普段の30倍に当たる3万5千件以上。電話の問い合わせも多く、町は「少なくとも町をPRするきっかけになった」と受け止める。

 今後も「希望者に生活の具体的なビジョンは聞いておきたい。長くこの町で暮らしてほしいわけで売れればいいという話ではない」として地道にPRを重ねる考えだ。加えて町内在住者にも要件を広げ、9月中旬をめどに再度募集することも予定しているという。

 ■近隣に成功例も

 ただ、近隣には成功例もある。合併前の旧東和町役場跡の5区画(約65〜100坪)を月額5500〜8600円で貸し、10年後には無償譲渡する制度を始めた山口県周防大島町は、昨年10月の開始以降すでに3世帯と成約した。

 家屋の建築工事も進んでおり、椎木巧町長は「現地は本土とを結ぶ橋から遠い島の東部。働く場は事実上島内に限られるが、ニーズをうまく受け止められた」と話す。子どもの数によって家賃を減額する公営住宅計画も進めているという。

 土地を借りる場合は購入した場合と違い、抵当権設定などで家を建てる際の融資も受けにくい。土地に絡む費用も神石高原町よりも高いにもかかわらず成功した背景には、意欲のある世帯を事前に把握し、移住に伴うサポートに熱心に取り組んだことも大きいようだ。

 神石高原町の人口は2004年の合併から3割近く減り、9千人を切った。14歳以下の子どもは約4割も減っている。町は小中学校の給食無償化や高校生までの医療費助成制度など、住みやすい、子育てしやすい環境の充実をうたうが移住に結び付くまでの流れにはなっていない。

 入江嘉則町長は「坪8円はインパクトはあったが住環境の提供だけでは移住に結び付いていない」と反省。「実際に住んでもらうためには町が親身になって就職相談に乗るなどサポートする必要があると感じた」と巻き返しを誓う。(川村正治)